リーガルマインドの浸透

価値の多様化の進む社会は、常識、道徳観、倫理観の共有が難しくなり、人と人の関係は、お互いに抱く当たり前の差異の壁にふさがれて、感情的対立が激化したり、排他的関係になりがちです。

またこうした人間関係の不調に対しては、従前のような暗黙知や伝統的習慣による調整が難しくなりつつあります。そこで新たに登場してきた枠組みが、「明文化されたルール」によって問題解決を図ろうとするリーガルマインドの登場です。すべてを法律や規則などによって理知的・合理的に判断していこうとするわけです。

価値の多様化の進む社会は、しがらみや絆によって物事を調整してきた共同社会に代わって、法化社会に傾斜していくわけです。しかし法化社会への傾斜は、とかく価値の異なる者同士の直接的交流による相互理解に基づく解決策や妥協策の模索が無視され、社会的主流派や理屈のたつ立場の者が有利になりがちです。リーガルマインドだけによる問題解決では、勝ち組と負け組だけが出るだけで、新たな文化や常識の創造への活力がむしろ失われます。

行き過ぎた法化社会への傾斜は、一般性、理性、論理が、特殊性、感性、感情より優先されがちです。非合理的なしがらみに縛られても生き辛いですが、冷たすぎるリーガルマインドの浸透も生き辛いものです。

もっと、感じるところの差異を、じっくりとお互いが考え合いながら新たな常識を創発しあっていくような共生的社会が望まれるところです。     (定森恭司)