生き方の違い

自己と世界の出会いの直接体験を、自己自身が自己組織化していくプロセスに注目することが大切です。

すべての直接体験をあるがままに自己自身に取り込み自己組織化することが理想的な自己組織化といえます。しかし、実際にはそうは上手くいきません。まず多様な直接体験そのものを自己自身がすべて直覚すること自体が困難です。さらに直覚された直接体験を、適切に自己自身に取り込むことも簡単なことではありません。

しかもこうした自己が直接体験をあるがままに実感し自覚することが難しいという現実が、心的苦悩や心的問題をもたらします。直接体験と直接体験を自己自身に取りこもうとする主体との間の不一致が心的苦悩や心的問題の源なのです。

世界の多様なひとつの個性的あらわれとしてこの世に誕生した自己は、生まれ故郷でもある世界を自己自身に自己再帰的に取りこみながら自己組織化しようとします。そこで自己は自己以外の世界との出会いのさまざまな直接体験の断片を、できるだけにひとつの全体的で統合性のあるものとして取り込もうとします。しかしそのプロセスがいつもスムースにいくとは限りません。多様な世界のパターンの中から、ある特定でローカルなパターンばかりが積極的に取り込まれてしまって自己自身が知らずのうちに独善的になってしまう場合があります。また特定の直接体験の断片が強烈なトラウマ体験となるため、どうしてもすでに取り込まれた自己の全体から隔離されてしまう場合もあります。

しかしこうした自己と世界の不一致の直接体験も、新しい受け止め方をもたらすような新たな直接体験さえあれば、それまでは自力ではなかなか困難だった自己自身への統合化や再統合も可能性となります。

心理相談の場とは、まさにクライエントにとっては自己と世界の不一致となるはずのところが、自己と世界の一致の新たな直接体験をもたらす場となる必要があるわけです。カウンセラーがクライエントの抱える自己と世界の不一致に伴う心的苦悩や心的問題の直接体験を共有する時、クライエントとはこれまでの自己と世界の不一致となる筈の直接体験をカウンセラーと一致する直接体験を通じて、新たな自己組織化のパターンを発見・創造することが可能となります。クライエントとカウンセラーが共感的関係を構築しながら一致する直接体験を累積すればするほど、クライエントは自ずとこれまでとは異なる自己と世界の直接体験のパターンを取り込むことが可能となるのです。

自己は自己と世界の不一致の体験が累積していたとしても、自己と世界の一致の瞬間の直接体験を徹底的に基準とすれば、適切な自己組織化の方向に向かうことが可能です。この時、自己と世界の一致の直接体験との自己照合の中で、より腑に落ちる感覚、知覚、直感、思考とは何かを実感し自覚していくことが大切になります。もし自己が世界との一致の直接体験を重視せず、たとえ世界と不一致になったとしても自らの信念・思想等を基準にして無理矢理進もうとすると、世界の方がより危険にさらされることになります。 (定森 恭司)