相談か?治療か?

症状の治癒や消失を目的として実施される医学的治療や医師の指示下で実施される心理治療と異なり、ホロニカル・セラピーのような心理学に基づく心理相談では、「人間関係とは、男女とは、夫婦とは、家族とは、親子とは、仕事とは、学校とは、生きるとは、自分とは、友情とは、恋愛とは、愛憎とは、苦悩とは・・」といったさまざまな問いについて、カウンセラーが伴走しながら共に整理し見つめ直し作業を行っていきます。

専門家の間でも混乱と混同が見られますが、医療的治療と心理学的相談には根本的な差異があります。治療が、「病気を治療をしてもらうもの」とするならば、相談は、「何らの生き辛さについて自ら相談するもの」といえるのです。
治療は、症状をターゲットとし、症状の治癒や消失を目的とします。したがって、症状の治療や消失を目的として医療機関で実施されている心理治療の場合は、医学的行為に近くなります。それに対して、医療機関以外の場で、生き辛さを中心にさまざまなことを見つめ直そうとする心理相談の場合は、哲学・倫理・宗教・芸術などの創作活動に近いといえます。

治療を求めるならば、エビデンス(科学的根拠にあるもの)があり、副作用も少なく、予後も安全で安心できる科学に基づく医学的治療方法を求めた方がよいでしょう。しかし、心理相談の場合には、カウンセラーに信頼をおけるか、心理相談の場が、安全・安心を得られる場であるか、相談開始当初に比較して、生き易くなっているかについて絶えず自己点検し続けた方がよいといえます。

医療機関以外の場に心理相談を求めるのか、それとも医療機関での医師の治療、または医師の指示下での心理治療を求めるのかは、しっかりと区別した上で判断することが大切です。前者ならば、心理相談室“こころ”のような臨床心理士の資格をもつ心理相談室がふさわしいといえます。しかし、後者の場合だったら、医療機関を受診された方がよいといえます。うつ症状の治癒や消失を目的を求めるならば治療を求め、うつ症状に絡み合ってくる生き辛さを見つめ直すならば相談を求め、両者の並行利用を必要と感じるならば、両者をとりあえず活用してみることが大切になるわけです。

現代社会には、人々が、安全かつ安心して、じっくりと生きる意味を自ら問い直す場が必要となっています。宗教と社会が密接に絡み合いが衰退していく時代にあって、本来ならば、治療の概念をも包摂し、自己や世界のことについて、しっかりと見つめ直すことのできるような場の構築が必要なのだと思われます。 (定森 恭司)