語ることの意味

語ることを奪われた人たちや語る力を与えられなかった人たちが、語ることができるようになるためには、まだ上手く語ることのできない言葉になる以前の感覚を、適切な言葉にしていく作業に付き添ってくれるよき聞き手を必要と思われます。

 

こうした聞き手を得れば、人は誰でも、ひとりよがりな語りから少しずつ変容していき、よき聞き手が増えれば増えるほど、語りの内容も、誰もが共有できる物語となっていくことができます。しかもこうした語りの変容は、語る言葉を奪われてきた人たちや語る力を与えられなかった人たちのこころの傷を回復させ、それまでの生きづらさを生きすいものに変化させていくこともできます。語り方は、言葉だけとは限らず、ダンス、音楽、絵、詩、写真、映像など、さまざまな表現手段があるといえます。

聞き手のある語りとは、人が生きている場に、命の息吹と歴史を与えることといえます。

(定森恭司)