無力から抜け出させるもの

自分だけの力では、どうすることもできないという無力感から人を抜け出させるものとは、その人自身の諦めない気持ち以上に、絶望の淵にあっても必死に生きる人々を尊び、その価値を理解する人々の存在ではないでしょうか。

そうした傷つく人を畏怖(いふ)する社会がある限り、誰もが、たとえ自分がいつか絶望の淵にたされても、きっと何かを支えに生きていくことができるという確信を得ることができるように思います。

現代人の不安の特徴

現代人の不安の特徴は、形としてとらえがたい漠然としたものであり、「存在感の亀裂」「生きている意味の喪失」といった類のものです。

こうした実存的危機を乗り越えるために大切となるのは、自己と世界の出会いともいえる生々しい直接体験との接触の回復であり、内的世界と外的世界のつながりの実感と自覚による感動といえます。    (定森恭司)

.不安とのつきあい方

 不安を不安として、そのまま感じながら、不安を自らの心の内に抱え込み、不安自体を意識しなくなるまで堪え忍ぶことが出来にくくなる場合があります。言葉にならない身体的な違和感やひっかかり感に対しても同じです。
 不安を受けとめ切れなくなると、不安を引き起こす対象を出来るだけ回避しようとしたり、逆に、必死に不安への対処法を本や情報機器を駆使して調べ、身につけようとすることになります。 
  しかしながら不安はとてもやっかいな代物です。不安感ばかり見つめていると、逆にブラックホールの渦に捕まったように心の闇の無限の底に引き寄せられてしまうことがあるからです。
不安は、案外、近すぎず、といって遠すぎずの距離をとりながら、そのままそっと、わきあがってくる感覚を、言葉になるのに身を任したり、動作、仕種や身体で表現してみたり、絵、詩や歌にしなりしながら、不安の波がほんの少しでも鎮まったり、別の世界の感じ方がやってくる方向を見定めていく姿勢が大切なように思われます。
 不安から逃げようとしすぎたり、不安を全部打ち消そうとしたりすると、もっとも根源的な不安に陥る危険性があるから注意したいところです。        (定森恭司)