ホロニカル心理学は、心的症状や心的問題などの生きづらさを抱える人たちへの心的支援としてホロニカル・アプローチを研究していく中で、これまでの心理学概念のパラダイムから新しいパラダイムへのシフトへの必要性から自然に形成されてきました。

 ここでは、ホロニカル心理学やホロニカル・アプローチで用いられる主要概念について説明します。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著書の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ)」(遠見書房、2015)を参照ください。

ホロニカル心理学で用いられる重要概念

1.こころの仕組みを理解する時
に用いられる主な概念
※ホロにかる心理学の心的構造論にあたます。

2.こころのあらわれ方を理解する時
に用いられる主な概念
※ホロニカル心理学の心的現象論にあたります。

3.発達の理解のための概念
※ホロニカル心理学の発達論にあたります。

4.ホロニカル・アプローチで活用される主な概念
※ホロニカル心理学の実戦論にあたります。

観察主体と観察対象の関係の不確定性

心理学は、“こころ”を対象とするため、研究対象を研究者自身から切り離して客観化し、普遍的な法則を得ることが難しい学問です。特に臨床心理学では、普遍的法則を探究してきた自然科学と違って、人が異なれば、心的症状や心的問題のとらえ方、アプローチさえも異なってくるというやっかいな問題が横たわっています。

近代科学は、デカルトによる“こころ”と物質を区別した二元論的世界観に支えられてきました。二元論によって、科学者たちは自分自身の影響を無視して、世界は因果論的にすべて説明のつく巨大な機械として理解できると考え出しました。

心理臨床の世界も近代科学的パラダイムの影響を受けて、科学としての心理学を目指した時代もありました。しかし、その後、近代科学のパラダイムの土台が崩れていきます。まず、アインシュタインの相対性理論は、時間も空間から独立しておらず、「時空」という四次元連続体を構成することを明らかにしました。近代科学の基礎として、絶対的な時間と空間の設定自体が怪しくなったのです。次にハイゼンベルクは、不確定性原理によって、ミクロの世界では、観察するものが何を対象として研究するかで、粒子のように振る舞うし、波動のようにも振る舞うことを明らかにしました。そして、今日の量子力学では、これまでの機械的世界にかわって、観察するものとされるものを分離・独立して扱うことができず、すべてのものが絡み合い、織り合わさりながら、絶えず変化生成する世界のイメージを描きだしたのです。このような発見は、観察するものとされるものを分離・独立して扱ってきた近代科学のパラダイムを、新しい科学のパラダイムへとシフトさせました。

ホロニカル心理学でも、“こころ”を扱う場合は、観察するものとされるものの関係に不確定性原理が働くと考えます。今、“こころ”を観察しようとする人が、“こころ”の現象の何に焦点化しようとするかで、“こころ”の振る舞いが変化するのです。心理臨床理論や技法が多数存在する理由もこの要因によります。

しかし、それでは心理相談の現場では混乱しやすくなるため、ホロニカル心理学では、「今、いかなる観察主体から、いかなる対象を、どのように見ようとしているか」を、「自己」「現実主体(我) 」「ホロニカル主体(理) 」などの概念を使って明らかにすることによって、これまでの心理臨床の理論や技法を、観察主体と観察対象の関係から整理・統合することを可能にしました。“こころ”の現象に関する観察主体と観察対象の関係の考え方の差から、今日のさまざまな心理臨床の理論や技法が生まれているわけです。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

不一致・一致

自己と世界との出会いの一致による直接体験は、不一致の時の直接体験との差異の自覚を自ずと自己にもたらします。この差異の自覚が、不一致の度に一致に向けて自己照合的システムを自ずと変容させていきます。不一致に伴う不調和は、一致時のきらめく直接体験を探し求めることによって自ずと調和に向かっていくのです。

不一致・一致に伴う直接体験のうちには、感情的なものだけでなく、理性的なものも含まれてあります。

自己と世界の不一致と一致は、自己=世界(死を含む)に至るまで、その都度、その都度、そのに応じたホロニカル主体(理)を発見・創造しながら自己を自己組織化する契機となります。

自己と世界の不一致・一致を、心理相談におけるクライエントとカウンセラーの間に起こることとして捉え直すと、クライエントは、カウンセラーによって無条件に受容され理解される体験(一致)を通じて、そうでない時(不一致)との差異を自覚することができ、一致の体験を手がかりにして、新たな人生を発見と創造していくことが可能になるのです。

クライエントとカウンセラーが、ただ気持ちの一致を求めているだけでは共依存的な関係になってしまいます。両者が人生の無常や悲哀を共に深めていくことができるような関係に至るとき、真の共感関係が生まれるといえます。クライエントとカウンセラーの一致・不一致の繰り返しの中で、共に変化することで、両者の一致の頻度の絆が深まっていくのです。共感はするものでなく、生まれるものなのです。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

気分

ホロニカル心理学でいう気分とは、たんなる個人内の快・不快のような一定期間持続する漠然としたものではなく、自己の底にある微かに動く体感のことです。自己と世界との一致・不一致の出会いの場に付随する根源的な気の流転のことです。

自己と世界の出会いにおいて、両者の一致状態から不一致に状態に転じる瞬間に仄(ほの)めく揺らぎのようなものが気分を形成します。

言葉やイメージも、根底には何かを表現したくなるような気分をもっています。
気分からさまざまな言葉やイメージが誕生するのです。

物事を理解するためには、誰もが気分の了解が必要になります。気分の了解なき理解は、どことなくすっきりとしないものです。

根源的な気分の変化が自己照合システムの源泉といえます。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著書の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

自己照合システム

自己は、複雑で変化の激しい社会的文脈に応じるために、合理的で柔軟性のあるもっとも効率的な自己言及的な自己照合システムを形成しようとします。

自己照合システムは、気分ごとに、自己(直接体験)、現実主体(我) ホロニカル主体(理) のもっと効率的な情報関係システムとして脳のネットワークとして構築されます。

何らかの理由で、自己照合システムが柔軟性を失い、固定的照合システムしかもたなくなると、自己組織化は停止・停滞するか後退してしまいます。

観察主体と観察対象をめぐる経験のすべては直接体験のうちに刻み込まれ、自己は、直接体験を手がかりに効率的で機能的な自己照合的システムを創りだしています。

緊張、弛緩、不安、絶望、怒り、悲しみ、空しさ、喜びなど、直接体験の抱く「ある気分」が、今後、自己がどのように振る舞うべきかを決定する自己照合システムをつくりあげていく起因となります。自己照合システムとは、「ある気分」と「あるホロニカル主体(理)」との結びつきと言い換えられます。

自己照合システムは、特定の気分が刺激となって、過去の同類の気分の刺激によって構築してきた自己照合システムが作動します。トラウマに伴うフラッシュバック現象も自己照合システムの神経学的な自動的作動といえます。

自己照合システム同士は、自律性を相互に保ちつつも相互ネットワークを形成していきます。しかし、社会的文脈によっては、自己照合システム同士の対立・矛盾が起きます。こうした時、自己は、できるだけ自己の同一性を保とうとして、異なる自己照合システムに通底するいまだ未発見の気分を自己組織化のエネルギーとして、新たな相互ネットワークをつくり出そうとします。その結果、より複雑な情緒を基盤とした、異なるホロニカル主体(理)を統合する新たなホロニカル主体(理)が発見・創造されます。

自己照合システムが作動してしまうぎりぎりまで遡れば、あるゆる気分が初動する寸前の「未発動状態」に行き着きます。“こころ”が揺らぎだし、ある気分が立ち上がってくる前の刹那は、「意識の0ポイント」(筒井筒俊彦)や、大乗仏教のいう、「空」にあたります。

もし、「意識の0ポイント」や「空」を基盤とする自己照合システムができればまさに煩悩はなくなりますが、そうは簡単にはいかないといえます。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著書の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

心的症状や心的問題(生きづらさ、苦悩)

“こころ”が何らかの理由で融通性を失ってしまうと、心的症状や心的問題などの生きづらさや苦悩となります。

ホロニカル心理学では、自己と世界が不一致・一致を繰り返すとき、自己と世界の不一致があまりに累積すると、観察主体と観察対象をめぐって、ホロニカル主体(理) 現実主体(我) 自己(直接体験) との関係が、自己の適切な自己組織化を促進することができなくなり、心的症状や心的問題を形成すると考えています。

心的症状や心的問題とは、適切な自己の自己組織化を阻害する「融通性を失った部分(ホロン)」と言い換えられます。
融通性を失ったホロンには、観察主体と観察対象の関係をめぐって、あらゆる不適切な悪循環パターンが織り込まれています。

頑固な心的症状や心的問題は、“こころ”の多層多次元にわたって、自己の自己組織化を阻害するような不適切なフラクタル構造を形成していってしまいます。

そこで、ホロニカル・アプローチでは、ホロニカル主体(理)、現実主体(我)、自己(直接体験)における固定的になってしまった心的構造の流動性を再度活性化させ、できるだけ自己と世界が一致する方向に自己の自己組織化を促すことを重視します。

“こころ”のある層やある次元の融通性を失ったホロン(ある心的症状やある心的問題)に対して、融通性をもったホロンの形成を根気よく積み上げていけば、やがて新たな適切なフラクタル構造を創発していくような共変変化(フラクタル構造のページを参照)が起きます。

局所的な意味のある小さな変容(融通性をもったホロン)が、“こころ”の他の層や他の次元での変容を連鎖的に呼び起こします。

心的症状や心的問題などの生きづらさや苦悩は、新しい生き方の発見・創造の契機となるといえるのです。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著書の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

フラクタル構造

微少な部分と全体とが自己相似的な構造をもっていることを「フラクタル構造」と複雑系の科学ではいいます。フラクタル構造の例としては、よく海岸線をモデルにして用いられるコッホ曲線(下左図)が引き合いに出されます。雪の結晶もそうです。

臨床心理学的に見て、ある心的症状や心的問題行動を反復する人には、自己及び世界との関わりをめぐってさまざまな悪循環パターンを反復しています。不適切なフラクタル構造があるといえます。
しかし、そうした時でもホロニカル心理学では、取り扱い可能な小さな悪循環パターンの変容から取り組み、小さな変容を根気よく積み上げれば、水が氷になったり、水蒸気になるように、やがて大きな心的変容に至ると考えています。

メロディの一小節を変えるとメロディ全体の相貌が変わるような現象、将棋の一駒の動きでその全局面が一変するような現象、口もとの微かなゆるみが顔全体の相貌を変えるような現象は、「共変変化」(黒崎宏)と言われています。

ホロニカル心理学におけるフラクタル構造の変容の捉え方も、自己のある部分の変化が自己全体に対しての共変変化をもたらすと考えています。

「ある意味のある小さな変化」が起爆剤となって、やがて共変変化を引き起こし、多層多次元にわたる不適切なフラクタル構造が、これまでとは全く異なる新たな適切なフラクタル構造を自己組織化していくと考えているのです。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著書の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

夢(ドリーム言語)

外我は、自己および世界の理解や関係づくりのために、言語および言語による論理をもっぱら活用します。これに対して、内我は、自己および世界を感じとるために、イメージや表象体系をもっぱら活用します。この時、外我のコトバを第一言語とし、内我のコトバを第二言語とすると、第一言語の通常の言語と区別するため、 ホロニカル心理学では、第二言語のことを、「夢言語(ドリーム言語)」と呼んでいます。

夢言語は、直接体験との密接な関係をもつため、身体感覚などの固有感覚、動作・仕草や情動・感情と深く結びつき、夢に代表されるような表象的イメージや身体言語などが中心となるのが特徴的です。

内我は夢言語を通じて、直接体験を直截的に直覚することが可能となります。

ホロニカル主体(理) によって分別し概念化していく外我の言語活動と異なり、内我の夢言語は、こころの深層において、外我の言語の成立する前、事物がまだ外我によって識別されたりして区別される前、すなわち言葉となる前の感覚をしっかりと内包しています。

外我が言語活動をやめ、かつ内我が夢言語をやめて、自己と世界との出会いの直接体験をそのまま直覚できたならば、その瞬間にホロニカル体験が生起します。

夢言語を媒介とする触れあいが、人と人の間で起きると、連鎖的な共鳴現象が創発され、お互いの情動が猛スピードで伝染するという情動感染現象が生じます。こうして夢言語は、第一言語とは異なる情報伝達能力をもつといえます。

夢言語は身体的な性質をもち、何かと何かをつなげるエロス的機能をもちます。これに対して、第一言語は、物事を細かく因果論的に分解・分析しながら再構成するというロゴス的機能をもちます。

内我の夢言語と結びつきを何らもたない場合の外我は、自己および世界からの現実主体(我) の疎外をもたらします。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著書の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

エネルギー

世界に対して、自己は生(創造)と死(破壊)がせめぎあって存在しています。
創造的世界の化身ともいえる世界から創造された自己は、世界に働きかけ、新たな世界を創造しながらも、世界によって容赦なく死をいつも迫られている存在なのです。

自己が内包する創造的エネルギーは、安定した原子核が莫大なエネルギーを内包しているようなものです。原子、分子、細胞などが、物理・生物学的レベルに応じた安定した物質による多重多層な構造を創りあげているように、自己という高次のレベルでも自己は心的エネルギーに応じて、より安定した秩序構造を求めて自己組織化しています。

自己は、生命力、衝動、攻撃性、本能、性欲、情動、感情などの意味を含む力動的なエネルギーをもっています。力動心理学的観点からは、「リビドー」といわれるものに相当します。

自己は、世界からエネルギーの供給を受け、新たな自己と世界をつくりあげながらエネルギーを消耗させます。

自己にとって世界とのエネルギーの交換停止や、自己と世界のエネルギーの平衡化となることによって、自らを産んだ創造的世界のエネルギーとなって包摂されることが自己の死といえます。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

場とは、生と死、意識と対象、主観と客観、物と物、自己と他者、自己と世界などあらゆるものが、観察主体と観察対象という関係となって交錯し関係しながら立ち現れくるところのことです。ホロニカル心理学では、そうした場とは、絶対無、空、ゼロ・ポイントと考えます。またホロニカル心理学では、“こころ”とは、本体、絶対無,無,ゼロ・ポイントと考えています。

自己は、有(生)と無(死)がせめぎ合いながら同一に存在するような絶対無(空)という場から創造され、かつ絶対無(空)という場に包まれています。 自己は、誕生以来、有(生)と無(死)という矛盾をはらんだ存在として場から創造されたといえるのです。しかも自己は、すべての生成消滅の源である絶対無から創造された世界と本来ホロニカル関係(縁起的包摂関係)にあります。そうした関係にあるが故に、自己は世界と不一致となって対立しながらも、その世界を自己自身に一致させよう自己及び世界の歴史的変容を促進しようとし、世界もまた、自己を世界自身に一致させようと世界及び自己の歴史的な変容を促進しようとします。ここでいう場とは、ただ単に時間と空間によって与えられるところを指すのではなく、可視的世界と不可視の世界が交錯しつつ、有と無をめぐって万物が生成消滅しながら時間と空間を与えられるところという意味です。

場からホロニカル主体(理) によってある対象を識別すると、識別する主体にとって、場は、識別された対象としての場所(世界)となります。そして識別される以前の場自体は忘れられてしまいます。場と場所の関係を、家で例えると、家は、食卓、トイレ、風呂、寝室、柱、壁などいろいろなものから作られています。しかし、この家から、家にある食卓を意識的に区分した途端、食卓が存在として意識されても、家の全体は背景となって意識されなくなってしまうことと相似的現象です。

心的問題、心的症状、精神疾患や精神障害などあらゆる心理社会的問題は、場所が抱える一切合切の矛盾を、場所に生きる自己が自己自身にすべて映し取り、自己自身の内に抱え込むことによって生じると考えられます。人の抱える生きづらさは、本人だけの問題でもなければ、何かの問題に因果論的に原因を帰すことができるような単純なものではないのです。突き詰めていけば、人は誰もが、宇宙開闢以来の多層多次元にわたる矛盾を場所的自己に映し、それを自己内に抱えながら生きているといえるのです。

それ故、被支援者の抱える場所的矛盾を、支援者も生きづらさとして共有し、共に、より生きやすい道を発見・創造するという関係が重要と思われるのです。しかし、こうした関係は、被支援者と支援者という関係を超えていると考えられるのです。場所の矛盾を共にせず、あたかも場所の外という安全基地から、場所的矛盾を抱える被支援者を見守り支援しようとする支援者は、厳格にいえば、ただの傍観的・評論的立場でしかないといえます。いかなる支援の場においても、被支援者と支援者が、場所的矛盾を共にしながら、共同研究的協働関係の中から、共に、より生きやすい道を発見・創造していくことが最も重要なことと考えられるのです。ホロニカル・アプローチは、こうしたパラダイムから生まれました。

場所と自己間に揺らぎを自己が直覚している時は、自己と場所(世界)の間の不一致感となります。この時、自己と場所(世界)の一致を高めるためには2つの方向があります。1つは、自己自身を変容させる方向であり、他は自ら生きている場所の変容に自己が参画していく方向です。しかし、いずれの場合も、究極的には、自己は、自己自身を創造した場との一致を求めて、自己と場所(世界)の適切な自己組織化を希求するといえます。

自己の変容は場所(世界)の変容に影響し、場所(世界)の変容は自己の変容に影響しながら、自己と場所は、自己と場所(世界)をさらに包む大きな世界を構成しているわけです。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

自己組織化

エリッヒ・ヤンツは、ミクロの世界からマクロの世界に至るまで、自己組織化のパラダイムを使って、宇宙の姿を明らかにしています。同じようにスチュアート・カウフマンも、複雑なシステムの理解においては、単純な部分や要素に分解していく要素還元主義的理解や自然淘汰理論による理解では限界のあることを指摘し、宇宙を貫く複雑系の法則としての自己組織化の論理の有効性を提起しています。

自己組織化とは、生命現象や社会の成立プロセスが、混沌状態から複雑な構造が自律的に形成されていくことです。

ホロニカル心理学では、自己も、自己と世界の出会いの中で、混沌としていた自己自身が世界との一致を求めて複雑な構造になりながら自律的に自己組織化していくと考えています。

複雑なものへという表現では、なにか自己が上昇向上していくというイメージを持ってしまいますが、自己の自己組織化のプロセスは、自己と世界の一致を求めて、自己が、もともとの全一性の原点に向かっていくような円環的なものといえます。

この時、自己組織化の原理が、ホロニカル主体(理) です。

臨床心理学には自己実現という概念があります。自己実現は、人格の完成や円熟性を意味します。これに対して、ホロニカル心理学における自己組織化は、内面的な人格の円熟だけではなく、自己と世界の関係を、より深く体験したり認識していくという意味を含みます。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。

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