ABCモデル(5):A点と上手く付き合うC点の構築

ホロニカル心理学ABCモデルにおける視野狭窄的で自己違和的体験であるA点固着状態と上手く付き合う方法には、恐らくクライエントの数だけあります。

大切なことは、いろいろな対応策の中で、もっとも安全で安心できる方法を被支援者と支援者が共同研究的に発見・創造していくことです。そうした作りに徹するのが支援者のもっとも大切な役割といえます。またそうした安全で安心できるフレームワークさえしっかりしているならば、支援者はどんな理論や技法を用いても、ある程度、同じような被支援者の変容をもたらすことができると期待されます。

そうした一つの方法で多くの人に効果をもたらすものに、A点ドツボ状態の外在化があります。自己と世界の不一致の自己違和感に視野狭窄的になって固着的している状態を、例えば、壺と小物(写真ではオカリナ)を使って、「ドツボ状態」として外在化し可視化することです。外在化することによって、被支援者が、ドツボ状態にはまっている自己自身を、ほどよい心的距離をとった観点から俯瞰できるように支援するのです。被支援者は、外在化されたシーンを記憶に残すことによって、同じようなA点固着状態に陥ったとしても、適切な支援者との共同研究的協働関係の俯瞰的観点(C点)から、ほどよい距離をもってA点固着状態にはまっている自己自身を俯瞰的に実感・自覚できるようになるのです。いったん、A点からほどよい距離をもった観察主体であるC点を確立した被支援者は、視野狭窄状態から抜け出し、A点以外の出来事のあることに俯瞰的に気づくように変容していくことができます。

また外在化された壺を火山に見立て、“こころ”の憤怒のエネルギーの噴火の予測をしながら、共同研究的協働によって対策会議を開くのもいいでしょう。比喩的に避難対策、破壊的エネルギーの創造的エネルギーへの転換などの能動的なイメージを扱うこともとても有効です。警笛付きのヤカンの比喩による温度調整もいいでしょう。

A点をいろいろな形でその場に応じて外在化し、適切な観察主体であるC点が布置したら、A点に対して、「ただ観察」のポジションを維持しながら、A点の非言語的な自己表現を含む適切な自己表現をサポートしてもいいでしょう。A点の感覚を絵や図式化したり、重さ・色・形・動きなどの感覚に変換してもいいでしょう。このようにA点への適切な対応法は無限に考えられるのです。

ただし、自己意識の発達の差異は、 共同研究的協働による支援によって、被支援者が適切な観察主体(C点)を内在化させるまでの時間の長短に大きな影響を与えます。