不一致・一致
自己と世界との出会いの一致による直接体験は、不一致の時の直接体験との差異の自覚を自ずと自己にもたらします。この差異の自覚が、不一致の度に一致に向けて自己照合的システムを自ずと変容させていきます。不一致に伴う不調和は、一致時のきらめく直接体験を探し求めることによって自ずと調和に向かっていくのです。
不一致・一致に伴う直接体験のうちには、感情的なものだけでなく、理性的なものも含まれてあります。
自己と世界の不一致と一致は、自己=世界(死を含む)に至るまで、その都度、その都度、その場に応じたホロニカル主体(理)を発見・創造しながら自己を自己組織化する契機となります。
自己と世界の不一致・一致を、心理相談におけるクライエントとカウンセラーの間に起こることとして捉え直すと、クライエントは、カウンセラーによって無条件に受容され理解される体験(一致)を通じて、そうでない時(不一致)との差異を自覚することができ、一致の体験を手がかりにして、新たな人生を発見と創造していくことが可能になるのです。
クライエントとカウンセラーが、ただ気持ちの一致を求めているだけでは共依存的な関係になってしまいます。両者が人生の無常や悲哀を共に深めていくことができるような関係に至るとき、真の共感関係が生まれるといえます。クライエントとカウンセラーの一致・不一致の繰り返しの中で、共に変化することで、両者の一致の頻度の絆が深まっていくのです。共感はするものでなく、生まれるものなのです。