主な技法
「ホロニカル・セラピーとは」の「ホロニカル・セラピーのさまざまなアプローチ(技法)」を参照ください。
・小物による外在化
・場面再現法
・対話法
・心的イメージの増幅・拡充法
・能動的想像法
・ただ観察
・エンパワ-メント法
・サイコモデル図法
・超俯瞰法
・スケール化法
・無意識的行為の意識化法
・ホームシミュレーション法
・スポット法
・三点法
ホロニカル心理学は、心的症状や心的問題などの生きづらさを抱える人たちへの心的支援としてホロニカル・アプローチを研究していく中で、これまでの心理学概念のパラダイムから新しいパラダイムへのシフトへの必要性から自然に形成されてきました。
ここでは、ホロニカル心理学やホロニカル・アプローチで用いられる主要概念について説明します。
「ホロニカル・セラピーとは」の「ホロニカル・セラピーのさまざまなアプローチ(技法)」を参照ください。
・小物による外在化
・場面再現法
・対話法
・心的イメージの増幅・拡充法
・能動的想像法
・ただ観察
・エンパワ-メント法
・サイコモデル図法
・超俯瞰法
・スケール化法
・無意識的行為の意識化法
・ホームシミュレーション法
・スポット法
・三点法
長く悪循環パターンが続いていた状態から、やっと何らかの微妙な変化を感じ出した時、何が前との違いをもたらしているのか、改めて整理することが望まれます。
スケール化法を使うのも効果的です。
こうした作業を、ホロニカル・アプローチでは、「差異の明確化の作業」と概念化しています。
たとえ小さな微妙な変化でも、過去と今現在との差異の明確化の作業を丁寧に行っておくと、その後の変化をより確実にします。なんとなく変化したという曖昧な状態よりも、差異の明確化の作業を図った方が、差異の実感と自覚が深まり、その後の変容への自信にもつながっていくからです。
ホロニカル・アプローチでは自己と世界とのふれ合いの直接体験を意識化する時の主要経路をチャンネルと呼びます。視覚チャンネル、聴覚チャンネル、言語チャンネル、動作チャンネル、身体チャンネル、固有感覚チャンネル等々がチャンネルとなります。
例えば、見る/見えてくる、聞く/聞こえてくる、動く/動かされるなど、チャンネルによっては、観察主体と観察対象をめぐって、意識化のプロセスに違いがあります。このことは、ホロニカル・アプローチでは、外我が優位な時と内我が優位な時の差として捉えていきます。
人には、優性なチャンネルと劣性のチャンネルがあります。
したがって、ホロニカル・アプローチでは、さまざまなチャンネルを活用して直接体験を実感・自覚できるようにサポートします。
いろいろなチャンネルを通じるほど、直接体験は深化していくといえます。
こころの内・外の心的現実を、クライエントとカウンセラー双方に共有可能な形で、面接場面に具体的に顕在化させることが外在化です。
仕草・動作、イメージ、夢、描画、箱庭、小物を使うなど、外在化には色々な方法があります。
心的葛藤がある場合は、相反する両極を外在化すると、相対立する両極性をより上位の観察主体からメタ認知的に観察することが可能となります。
外在化によって、自己の内にあったものが自己の外に自己表現されると、これまでの観察主体と観察対象の関係に新たな関係が創出されます。外在的に自己表現された対象は、新たな観察主体を得て自発自展をしだすことが多くなります。
内在化していた内的世界が、外的世界に外在化されますと、今後は外在化されたものが、再び内界に影響を与えるといった新たな円環的循環ができあがるからです。
ホロニカル・アプローチはできるだけ問題を俯瞰的枠組みの中で対象化することで、問題(生きづらさをもたらしている課題)を共有し、かつ共同研究的協働関係の中で、クライエントのより生き易い道を共に発見・創造していきます。
心理相談とは、心的症状や心的問題に関わる「何か得たいの知れない対象」を外在化することにより、主体から、「得たいの知れない対象」を切り離し、主体にとっては、訳のわからなかったものを、少しでも主体にとって取り扱い可能なものへと変換する作業といえます。
href=”https://kokoro.racoo.co.jp/blog/%e5%87%ba%e7%89%88%e7%89%a9.php”>心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。
「共感」とは、カウンセラー側にクライエントに対して共鳴的反射と鏡映的反射が同時に生じてくる現象です。しかし共感は、カウンセラーがクライエントに対して、共感しようとしてできるものではありません。
共感とは、クライエントの直接体験とカウンセラーの直接体験が一となるような関係になったときに、自ずと場から創発されてくるようなものといえます。
「共感」は、「するものではなく」、「生まれるもの」といえます。
ホロニカル・アプローチでは、クライエントとカウンセラーの共感的一致と共感不全の不一致を共に丁寧に扱います。決して共感的一致だけを心理相談に求めるものではありません。
クライエントとカウンセラー関係が、一瞬一瞬で共感的関係と共感不全関係になると
いう現実体験を通じて、まさに自己は、両体験のズレと一致のせめぎ合いの中に自己と世界の一致を求めて自己組織化が生起するのです。
ホロニカル・アプローチでは、クライエントの言動にカウンセラーが応答する時、観察主体が観察対象を分析・識別することを強化するための応答を「鏡映的反射」とし、観察主体が観察対象を直覚することを強化するための応答を「共鳴的反射」として両者を区別します。
自己は、観察対象としての「見られる自己」と観察主体としての「見る自己」とが分離して、はじめて自己を自覚できます。「見られる自己」が「見る自己」と同一の時(見る自己が無の時)は、自己と世界は無境界となり、あるがままの世界との共鳴的な直接体験のみとなります。この直接体験が、世界内存在としての本来の実存感をもたらします。
「見る自己」は、誕生当初から働くわけではありません。「見る自己」の成立のためには、乳幼児期の自己の内も外の区分もない時期に、自己と世界の混沌とした出会いを、自己における体験として映し取り、常にひとつのものとして包み込み込んでいく適切な保護的他者が必要となります。通常、こうした他者は、母親などの重要な保護的存在です。
自己は、適切な保護的対象の共鳴・鏡映を得て、外(世界)と内(自己)の区分のなかった直接体験が、ひとつの自己の内の出来事と外で起きている現象として整理されていくと考えられます。
href=”https://kokoro.racoo.co.jp/blog/%e5%87%ba%e7%89%88%e7%89%a9.php”>心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。
ホロニカル・アプローチでは、適切な俯瞰的枠組みとして無限の俯瞰を重視します。
俯瞰というと、一般的には鳥瞰図的俯瞰をイメージする場合が多いのですが、ホロニカル・アプローチでいう俯瞰とは、極小のミクロの無限の点の視座から、極大のマクロの無限の球まで含む視座から自由無礙に対象を観察することを指します。
極小のミクロの無限の点と極大のマクロの無限の球とは、観察主体が観察対象と合一して無となることを意味し、ホロニカル体験となります。
自由無礙の俯瞰=無限の俯瞰といえます。自由無礙の俯瞰は、自己と世界の世界関係の実感と自覚を深め、自己の自発自展的な自己組織化をもたらします。
「悩み(心的症状・心的問題・苦悩)」があると、観察主体と観察対象の関係においても、悪循環パターンが見られます。そこでホロニカル・アプローチでは、観察主体と観察対象の間における悪循環構造の顕在化と変容のために、より適切な観察主体からの新たな俯瞰的枠組みの提供が必要であると考えるのです。人は、こうした新たな俯瞰的枠組みを得てはじめて、自らのこころの内・外における悪循環パターンから抜け出し、これまでの自己および世界との関係を見直したり、新しい自己組織化が可能になるのです。
ホロニカル・アプローチでは、俯瞰の方法として、「小物による外在化」「場面再現法」「対話法」「心的イメージの増幅・拡充法」「能動的想像法」「ただ観察」「エンパワ-メント法」「サイコモデル法」「超俯瞰法」「スケール化法」「無意識的行為の意識化法」「ホームシミュレーション法」「スポット法」「三点法」が活用されます
ホロニカル・アプローチでは、自己が自己自身と世界について自己言及的に自己観察していくことのできる場を設営します。
小林道憲は「自然にしても、社会にしても、非線形系は、要素レベルにおいても、系全体においても、自己自身の働きは、次々と他に影響を及ぼすばかりでなく、絶えず自己自身に帰ってくる。この自己回帰的な運動の繰り返しによって、自己自身は自己を変革していく。生きた系は、そのように、自己言及的に自己自身を創出する」と指摘しています。
ホロニカル・アプローチでは、適切な自己観察的枠組みを提供すれば、クライエントは自発自展的に適切な自己を自己と世界が一致する方向に向かって自己組織化することができると考えています。
ホロニカル心理学に基づく、ホロニカル・アプローチは治療ではありません。したがってクライエントとカウンセラーの関係も治療関係ではありません。
ホロニカル・アプローチは、心的な苦悩を通じて、より豊かな人生を歩むのを発見・創造する枠組みを提供する臨床心理学的支援法です。
ホロニカル・アプローチでは、こうした支援法を徹底的に追求していく中で、クライエントとカウンセラーの関係も、共同研究的協働関係というものに自ずとなっていきました。
カウンセラーの共同研究的協働者という姿勢は、治療するという姿勢とは、基本的パラダイムが異なります。
医療は、治療を前提とした治療契約に基づく行為です。治療は科学的裏付けをもった医学的治療行為として、専門性や資格を有する医師によって独占行為として実施される必要があります。しかしホロニカル・アプローチは、あくまでクライエントの主体的意思にもとづく心理相談への支援行為です。臨床心理学的行為と医学的治療行為の両者は、それぞれ明確に独立していて、必要に応じて連携が大切となる併存可能な関係にあるといえます。このことは教育的行為、法律的行為と臨床心理学的行為との関係と同じです。
心的症状や心的問題を契機に、共同研究的協働に取り組んでいると、結果的に心的症状や心的問題が消失したり、心的症状や心的問題の意味が自己違和的なものから自己親和的なものへと変容していくことはいくらでもあります。
ホロニカル・アプローチにおいては、心的症状や心的問題行動は、治すべき対象としてでなく、より生き易い人生を発見・創造するよき契機として扱うことが大切となっています。
明治以降積極的に西洋から取り入れられてきた心理学は、“こころ”の現象を対象化し、自己内省したり、自己分析したり、自己洞察したり、自己観察します。こうした観察主体が“こころ”の現象を観察対象として観察するという光学的な構図は、「近代的自我(個我)が、こころの現象を意識化する」ことを重視するパラダイムの上に成り立っているといえます。
しかし、西洋的心理学が取り入れられる以前の日本では、“こころ”の現象をそのままあるがままに実感することを重視し、“こころ”を対象化することを忌避していたといえます。いや、むしろ、自己鍛錬としても、自己と世界が無境界となる触覚的覚醒が重視されていたといえます。日本では、“こころ”は学問の対象ではなく、心身一如の無の境地を極める修養・鍛錬のテーマだったといえます。
今日の日本人は、“こころ”の捉え方や“こころ”とのつきあい方が随分欧米化したといえますが、それでも日本人の心底には、日本的な“こころ”の捉え方があります。
ホロニカル心理学では、欧米と日本の“こころ”に対する姿勢の違いも、直接体験を観察対象として観察しようとする時と、自己と世界が「一」となる直接体験をあるがままに実感する時の差異の観点から徹底的に捉え直します。
ホロニカル心理学では、西洋の近代的自我も重視しますが、直接体験の覚醒と意識化を共に重視する立場から、直接体験の「実感」とその「自覚」を大切にします。
絶対的真理の論理を導き出す哲学でもなく、内省的体験の極致に絶対的主体に救済を求める宗教でもなく、ましてや普遍的法則を導きだそうとする科学でもなく、個の直接体験に「実感」と「自覚」に基づいて自己と世界の「一致と不一致」にあって、少しでも両者の一致を求めるのがホロニカル心理学の立場です。