夢の世界

ホロニカル心理学では、を重視します。夜見る夢のことです。

北斎

昔から人は、夢にずっと強い関心を払ってきました。古代ギリシャの儀式では、治療的な夢を見て癒されたといいます。日本でも親鸞が六角堂でみた夢の逸話も有名です。

夢には過去も現在も未来も包含されています。意識も無意識も包含されています。身体の状況も夢内容に強い影響を与えています。生育歴や生活歴に関係するような過去のテーマばかりでなく、欲求、願望、希望、期待など未来も含まれています。夢を創りだす源泉においては、日常生活ばかりではなく、様々なものが包摂されています。

ホロニカル心理学では、夢は、多層多次元な“こころ”の働きのすべてを包摂し、かつ象徴していると考えます。

夢は、日常生活での意識水準と異なり、無意識なものを含む自己と世界の出あいのすべてを象徴的、置き換え的、圧縮的、融合的、合成的に展開させます。

夢は、無意識へいたる王道である」とはフロイト(1856–1939)の有名な言葉です。意識活動が生起する前に、すでに起きている仕草・動作、口癖や傾向など無意識のもつ非言語的な影響を学ぼうとするならば、夢に親しむことはよき手がかりになります。

妖怪に襲われる夢ばかりを反復夢として見ていた夢見手が、夢の中とはいえ、呪術師となって妖怪を手懐けるように変貌していく頃、現実でも、理不尽な言動にさらされても何もできなかった人が、とても大胆に振る舞うように変容していったりするのです。

男性はアニマといわれる女性像、女性はアニムスといわれる男性像が出てきて、両者が統合されると、これまで以上に自己の器が大きくなることもしばしばです。

多くの夢に向き合ってきて言えることがひとつだけあります。夢はとても自然な統合力をもっているということです。意識的、個的、合理的、局在的なものから無意識的、自己超越的、非合理的、非局在的なものまでを含み、すべてを統合していく力を夢はもっているということです。

ただし、夢は何を私たちに伝えようとしているのか、かつ夢の続きを能動的に想像していくなど、現実生活に夢を生かしていくことができるようなワークを共にすることができる相手がいるかどうかは、“こころ”の統合力の発揮におおいに関係するようです。