共創的支援の事例(5):「アンガーマネジメント」の受講勧奨に抵抗を示したある母親

共創的支援の事例(4)の続き

AIで作成

「カット虫退治大作戦」第1回目の合同面接日です。

母親Xと子どもY(小5男子)は、相談員Aとともに児童相談所にやってきます。親子の関係は、軽口をお互いに言い争いながらに、傍目には、友だちのようなノリの明るさです。

児童心理司Bはホワイトボードの前にたち、後のメンバーが円座になるように促します。円座になったところで、児童福祉司Bは、「それでは、今から1時間15分間、みんなでカット虫退治大作戦を開始します」と宣言します。

次に児童福祉司Bは、この2週間の親子関係の諍いの様子を母親Xと子どもYに確認していきます。すると、子どもYは、前回以降、母親Xの暴力はなかったことを嬉しそうに報告し、「あとは、何も問題はなかった」と言います。すると、母親は、「何を言っているの! Yはお母さんのいうことなんか、ちっとも聞かないじゃない」と苦笑いしながら訴えます。

母親Xの話では、「毎日、食事のときゲームばかりしていて、ちっとも食べない。口うるさくいうと、『うざい』といってくる・・思わず叩きたくなるけど、叩けば、虐待というだろうから我慢しているけど、ちっとも食べない・・・」と、苦情を訴えるように語りだします。すると子どもYも、「すぐに終わるといっているのに聞いてくれない。ゲームを取り上げると脅してくる。うざい」と言い出します。どうやら、こうした諍いが毎日続いているものの母親Xは体罰は避け、子どもYも物を投げるような家庭内暴力までは控えているようです。

すると、児童福祉司の上司Dから、「じゃあ、毎日の食事の場面を、ここで再現してみて、お母さんからすれば夕食の用意ができたけどYがちっともゲームをやめないとき、逆にYからすればゲームがすぐに終われないとき、どうすればいいか、いろいろみんなで具体策を、もし自分がお母さんや子どもの立場だったら、具体的にどう振る舞うかという感じで、提案しあってみて、その上で検討してみたどうだろう」と提案があり、そのまま採用されます。

 

「もし自分がお母さんや子どもの立場だったら、具体的にどう振る舞うか」を考えるために、取り上げる場面を絞り込むことを目的に、ホワイトボード上には、児童福祉司Bによって、食事の場面の間取り図と、母親Xと子どもYの立ち位置が俯瞰構図の中で再現され、その時の親子の会話が映画の一幕のように再現されていきます。

X:「もうご飯だから、ゲームをやめてと言っているでしょう!」と強い口調。
Y:「ちょうどいいところだから、ちょっとだけ、待って!」
X:「いつもそういってやめないじゃない」と苛々しながらいう。
Y:「うざい」

Xは体罰を加えたくなる衝動を抑制するために、別室に引きこもります。Yはゲームをしながら食事をします。基本的には、同じようなパターンが続いていることがわかります。

(続く)