
共創的支援の事例(5)の続き
参加者の多くは、みんなゲームに熱中している時の終わらせ方・終わり方の難しさを知っているため、なかなか良い案がすぐには出てきません。
相談員Aは、母親の立場から、「一緒にご飯をお母さんは食べたいからゲームをやめてくれないと言うかなあ。でもこの方法は、いつも自分も中学生の娘につかっているけど、なかなかやめないけどね」と実体験から語ります。
まだ子育て経験のない児童心理司Cは、いかにも心理職らしく、「ゲームへの依存性の問題もあり、簡単でないと思うだけに、お母さんは、あと何分?と聞いて、キッチンタイマーをセットしてみてはどうでしょう」と提案します。
上司Dは、「ゲームのスイッチをお母さんが、切ったらどうだろう」と提案しますが、全員から、「それは無理」と即座に却下され、一同爆笑となります。
子どもYからは、「ゲームをする時間を決めろというけど、夕食の時間が毎日バラバラだから・・」と母親も時間を守れば、自分も時間を守るというような発言をします。すると母親は即座に「仕事の終わる時間が決まっていなから仕方がないでしょう」と答えながら、「私が我慢するしかないのかしら」と呟きます。
すると、一同が「そんなことはない」と母親の立場を支持し、流れは「どっちも我慢」というトーンになり、「でも難しい問題。次回、また研究しよう」となり終了します。
終了の時、母親Xは、「ありがとうございます」と頭を下げ、子どもYも母親Xにつられるように頭を下げます。驚いた児童福祉司Bが、「とんでもない。これという案が出なくてすみませんでした」と謝ると、母親Xは、「別れた旦那が、いつもアルコールを飲みながらゲームばかりしてる人で、それを注意すると、『誰のおかげで飯が食えると思っているんだ』とYの前で、食卓テーブルをひっくり返す人だったので・・・あのときのことを思い出せば、たかだか子どものゲームのことで、みなさんにこんなにまで真剣に考えていただけて、それだけでもう嬉しくて」と涙を流します。
みんなは、この親子は、今より苛酷な日々を生き抜いたきた人たちと改めて気づきます。
2週間後、「第2回カッと虫退治大作戦」が開催されます。上司Dは、緊急ケースへの対応のため欠席です。その代わりに、上司Dの勧めで、まだ新卒1年目の児童福祉司と児童心理司が参加します。
(続く)