自己の存在は、自己と他者との間の不一致を前提にして、お互いのアイデンティティを磨きあっています。他者とは、私とは異なる世界に生きているという実感・自覚が、私たちを創りあげているわけです。だからこそ、私たちは、自己とは異なる世界を生きる他者との関係を通じて、新たな自己の理解を深め、新たな世界を発見・創造することができます。
しかし不一致が拡大し自己と他者の間の溝が深まると、相互理解は不可能になります。特に自分の実感・自覚している世界を唯一の真実として主張するとき、不一致は修復不可能なほどに増幅され、結果として関係は破綻に至ります。
しかし不一致に対して、お互いがお互いに異なる世界(異なる常識、異なる当たり前の感覚)をもっていることを前提にした上で、無理に一体化を求めず、むしろ根気よく相互理解し合うことができれば、対話は、とても豊かで有意義なものとなり、お互いが異なる観点を参考にしながら、新しい世界を発見・創造することができます。