トラウマを抱える人々の中には、その記憶が引き起こす苦痛から逃れるために、否認や切り離しを試み、嗜癖的な行動を示す人がいます。これらの嗜癖は、アルコールや薬物の使用、ギャンブル、インターネットゲーム、自傷行為、性的逸脱など、多岐にわたります。
トラウマに伴う嗜癖行動に対処するための重要なポイントは、トラウマ記憶が刺激された瞬間の身体反応に気づき、その反応を安定させることです。これは、呼吸数、脈拍数や血圧の変化、緊張度合いの変化などを「ただ観察」することで達成されます。
ABCモデルに基づき、観察主体であるC点から、A点に意識狭窄的になった時の身体的な変化を無批判・無評価・無解釈の立場から「ただ観察」します。
被支援者が自己と世界の間に強烈な不一致体験（トラウマ体験）を持つ場合、被支援者と支援者が共同研究的な協働関係を構築し、「ただ観察」によって共創的に俯瞰することが、被支援者がA点から適切な距離を保つために重要となります。