
ホログラフィック理論は、全体性が部分に反映されるというホログラムの原理に基づき、「ホログラフィック・パラダイム」と「ホログラフィック原理」の二つの主要な概念を包含しています。これらは共に「ホログラフィー」という概念に関連していますが、それぞれ異なる領域で発展してきました。
1. ホログラフィック・パラダイム(Holographic Paradigm)
心理学、意識研究、哲学、さらには科学全般において、宇宙や意識がホログラフィックな性質を持つという仮説に基づく考え方です。主要な提唱者の一人である神経科学者カール・プリブラム(Karl Pribram)は、脳の情報処理がホログラムのようなパターンで行われる可能性を示唆しました。また、物理学者デイヴィッド・ボーム(David Bohm)は、「暗在秩序(Implicate Order)」と「顕在秩序(Explicate Order)」の概念を提案し、宇宙全体がホログラムのように情報を保持している可能性を示しました。これらの理論は、意識や現実の知覚が全体性と部分の相互関係によって成り立つことを説明しています。
2. ホログラフィック原理(Holographic Principle)
量子重力や宇宙論に関連する概念で、物理学者ジェラルド・トフーフト(Gerard ’t Hooft)とレオナルド・サスカインド(Leonard Susskind)によって発展した理論です。この理論は、「宇宙のすべての情報は、その境界(例えば、イベントホライズンなどの2次元面)に符号化され得る」という考え方に基づいています。ブラックホールのエントロピー(情報量)がその表面積に比例するというベッケンシュタインとホーキングのエントロピー公式を基に、3次元空間の情報が2次元の表面に書き込まれている可能性を示唆しています。
これら二つの概念は、「ホログラフィー」の原理を用いながら、ホログラフィック・パラダイムは意識の領域で、ホログラフィック原理は物理学の理論として発展してきました。しかし、意識研究と物理学の間で「情報」の扱いに関する共通点が見られるため、両者を結びつけようとする量子脳理論や、意識と物理法則の関係を探る研究では、「意識のホログラフィックな性質」と「物理的宇宙のホログラフィックな情報構造」が相互に関連し得る可能性が示唆されています。
ホロニカル・アプローチも“こころ”の研究領域においてホログラフィー理論を採用しています。特に「内的世界(意識)」と「外的世界(社会・環境)」の相互作用を重視し、部分と全体の関係がすべて縁起的包摂関係(ホロニカル関係)にあることに注目しています。この点で、ホログラフィック・パラダイムの意識モデルは、ホロニカル・アプローチの観点と共鳴する可能性があります。さらに、物理学領域のホログラフィック原理の「情報の投影」と、意識や現実の知覚の仕組みを結びつけることで、“こころ”の新たなホロニカルモデルの発展につながる可能性が期待されます。