「また会いたくなる関係」を創り出すための「家庭訪問」チェックリスト

よき家庭訪問のためのチェックリストを説明している場面のイラスト
チェックリストづくり

家庭訪問型支援によって、「また会いたくなる関係」を創りだすためのチェックリスト

家庭訪問による心理・社会的支援では、喜怒哀楽を共にしながら「寄り添っていく」うちに、「また会いたくなる関係」を構築することが大切です。地縁・血縁社会の絆を基盤としていた地域共同体の共通感覚が失われていく時代にあっては、社会制度や情報の提供であろうと、相談活動であろうと、子育て支援であろうと、家事支援であろうと、学習活動であろうと、同行サービスであろうと、「また会いたくなる関係」を構築し、「親密な他者」が成立しないことには何も先に進まないのです。

そのためには支援者は、地縁・血縁関係にとらわれることなく、媼・翁のような、おばさん・おじさんのような、お母さん・お父さんのような、お兄さん・お姉さんのような、妹・弟のような「親密な他者」ともいえる存在になれることが、誰もが地域社会で孤立しないために大切となるのです。しかし、こうしたキーパーソンとなることが個人情報に過敏となる時代にあっては、とても簡単そうにみえて案外難しいのです。しかし、こうした関係をさらっとやってのけてしまう人もいるのも事実です。そこで、そうした人たちの姿勢を整理すると次のようなポイントが見つかります。

<哲学>

1.当事者参加による当事者中心の社会包摂的支援計画を何気なく提案している。

2.当事者には、支援内容に対して疑問や異議を述べる機会を設け、丁寧に耳を傾けている。

3.治療や働くことなどを条件とすることなく、当事者が継続的支援を受ける権利をさりげなく保障している。

4.原則週一回に近い訪問支援を実施している。

5.衣食住などに関する具体的な生活維持のための支援を優先している。

6.当事者の自己決定や自己選択を尊重している。

7.当事者や支援者にとっての安全・安心が脅かされていない限り、当事者のトライ・アンド・エラーによる体験学習の機会を保障している。ただし、当事者が、明らかに生命の維持や生命の安全・安心の確保が脅かされると支援者に予測される選択を自己決定しようとするときには、当事者の選択と自己決定に伴う尊厳と支援者の支援との間でぎりぎりの折り合いを支援者が取り付けようとする努力を最後までしている。

8.生きづらさを抱えている人が、苛酷な環境の中で、生き延びるために無意識にとってきた生き方の否定的側面や弱点ばかりに問題の原因を帰属させ、その弱みの問題解決ばかり図ろうとするのでなく、もっと生き抜いてきた肯定的側面の強みに焦点を合わせ支持することで、生きづらさを抱えてきた人の存在への自己肯定感や尊厳の回復を図ることをごく自然に行っている。

9.適切な生き方を身につける機会がない環境を生き抜いてきた当事者に対して、より生きやすい生き方を身につける機会が保障され、しっかりと身につくまで諦めないで継続的な支援をしている。

10.生きづらさを抱える人への支援哲学や支援法が、当事者だけなく、他の多くの人の人生により生きやすさをもたらすような支援になっている。

11.社会・文化の常識の中に潜む先入観や偏見や常識の見直し作業を絶えずしている。

12.当事者の適切な代弁性の役割を果たしている。

13.偏見を内在化し自己否定感が強く無力感にさいなまされつつも、今日まで生き延びてきている当事者が持っている潜在的能力や耐性力に対して畏敬の念を抱いている。

14.感情をコントロールするための理性ではなく、感情を理解するための理性の働きを尊重している。

15.過去への原因探しばかりに拘泥することなく、未来に希望が開かれてくるような具体的な支援になっている。

 

<関係性>
16.「親密な他者」「また会いたくなる関係」となり、当事者と支援者が「ほどよい距離」という「限界設定の枠」を維持できている。しかし、「限界設定の枠」を超えた危機においては、支援者ひとりでは抱え込めない現実を自覚し、「絶対見捨てることができない」という気持ちから「限界設定の枠」を今一歩踏み越えて、関係者一堂に対してできる限りの助けを求めることができている。

17.当事者及び支援者の関係の多様性(価値・意見)を尊重している。

18.当事者だけではなく、支援者自身も自らが知らずのうちに身につけてしまっている先入観や偏見(スティグマ)に気づき、その適切な変容を追求していく姿勢が保たれている。

19.当事者自身が自らの体験を自らの言葉で物語ることができるような小さなドラマのような支援になっている。当事者の抱える生きづらさという元来誰もが共有可能なテーマを、疾病・障害や、あるいは心理の用語ばかりに換言することによって、共有不可能な、特殊な病理の問題として個人化していない。

20.支援者が、当事者自身が自らの体験を自らの物語として語っていく権利と主体性を専門的知識を含む他律的に意味づけられた物語にすることにより奪っていない。

 

<運営体制>
21.スタッフのケース検討や研修が義務化され定例化されている。

22.スタッフはチームとして活動している。

23.チームの中にベテランのスタッフがいるが、既存の専門知識や技術にこだわっておらず、むしろ創造的活動をしている。

24.スタッフの休養や適切なメンタルヘルス(共感疲労、燃え尽き、代理受傷への適切な対処)が保障されている。

25.「実践の智慧」を独りよがりなものとせず、量的研究や質的研究によって裏付けていく継続的努力をしている。

26.守秘義務の遵守と量的研究や質的研究によって裏付けれられた「小さなローカルなインパクトのある物語(小さな伝説的な実際の事例の累積から構成された事例)」が構成的物語としてまとめられ、その価値ある物語が社会に向かってしっかりと発信されている。