
ホロニカル心理学において「気分」とは、単なる個人内の快・不快といった漠然とした情動や感情のことではありません。それは、自己と世界の出あいにおいて自己が場所的自己として、その直接体験において直覚する自己の奥底に微かに流れる非言語的な身体に刻み込まれた根源的感覚のことです。気分とは、自己と世界の不一致・一致の出あいに付随する根源的な「気」の流転のことです。
自己と世界が出あうとき、両者が一致から不一致へと移ろう刹那に、仄(ほの)かな揺らぎが立ち上がります。その揺らぎこそが気分を形成し、私たちの存在の生きる方向を基調づけるのです。
気分は、自己と世界の出あいにおける不一致・一致の風情を本質化する働きであり、対象化して把握するものではなく、ただ「感じ取る」ことで知られるものです。私たちが物事を理解するとき、その根底には気分の了解が必ずあります。気分を欠いた理解は、ただの無味乾燥な形式的理解にすぎません。
また、気分の変化は、すべての自己照合システムを駆動する源泉です。したがって、気分は決して個人的な内面にとどまるものではなく、自己と世界の出あいに色合いを与え、両者が自己組織化していく方向を共に形づくる根源的な働きであるといえます。