新しいパラダイムに基づく訪問支援

適切な対人支援は、人と人の信頼関係を暗黙の前提として成立します。これまでの心理社会的支援において重視されてきたカウンセリング・マインドも、信頼関係を前提とした観点といえます。

しかし、複雑化し錯綜する現代社会にあっては、もはやカウセンリング・マインドによる支援の一歩手前のテーマが顕在化します。それは、人と人、人と社会、人と世界の失われた基本的信頼関係の再構築や修復からスタートする必要のある人の増加です。こうした人は、カウンセリング・マインドを前提とした内的世界への支援だけでは、支援者以外の他者、社会や世界との不一致の関係にますます敏感になり、傷つきやすくなり、一層、強い警戒と不信を抱き、過去を恨み未来に希望を抱けなくなって、支援の場からも遠ざかってしまう人が増加してしまう傾向にあります。

しかし、そうした人々に対しても、週1回レベルの数ヶ月にわたる根気のよい訪問支援によって、支援者が被支援者と共に変容し、「親密な他者」になれた時、被支援者と支援者の関係が支援関係を超えた信頼関係が創発されてきます。ここに至って、はじめて、従前型の支援を、被支援者は主体的に活用することができるようになるのです。

今、私が関わっている訪問支援の最先端の現場では、そうした変容事例が沢山ではじめています。ただし、このことを可能とするコンセプトは、専門家がアウトリーチ的に専門的支援のために家庭を訪問するという視点ではありません。むしろ誰もが共有できる生きづらさに対して、協働的関係を構築しながら、一緒に問題解決に取り組むことを重視するという実践哲学がポイントとなっています。