苦悩の理解と効果測定

観察主体の発達段階

苦悩を治療的視点から取り扱おうとする人は、「治療をする」という視点がどのような基準によって治療対象を選択し、その上、治療対象に対して治療効果があったかどうかを明らかにする必要があります。特に医行為では、エビデンスに基づく最良の科学的根拠を明らかにすることが求められます。

また臨床心理学的行為を医行為の類似行為と考え、精神療法や心理治療を「治療行為」と考える人は、医行為と同じように、治療効果に関してのエビデンスに基づく科学的根拠を明らかにする必要があります。

また、苦悩に対して「治療」的観点ではなく、苦悩する当事者に寄り添い、喜怒哀楽を共有する人の場合は、治療行為におけるエビデンスとは異なる信頼のある効果測定をしていく必要があります。。

内的世界と外的世界を共に扱う統合的アプローチであるホロニカル・アプローチは、医行為とは併用可能ですが、医行為とは異なる心理社会支援行為です。そこでホロニカル・アプローチにおいても、医学的なエビデンスとは異なる研究が必要になりますが、まだまだこれからの課題といえます。

今のところいえるのは、疾病の有無に関係なく苦悩を抱えている人が、より生きやすい人生の道を発見・創造していくときの変容ポイントを明らかにしていくことになると予測しています。しかもその重要な指標に、適切な自己意識の発達及び、適切な観察主体の発達段階の確立があると予測しています。疾病を扱うのではなく、疾病の有無に関係なく、より生きやすい生き方の探究に寄り添っていく伴走型の心理社会的支援としての指標は、医学的な指標とは異なると考えています。