
ホロニカル・アプローチの実践者が組織内で効果的な活動を展開する際、同僚や管理職からの評価が得られなくなることがあります。これは、単なる嫉妬や羨望以上に、相手の既存の価値観や信念を揺るがす可能性があるためです。
この現象は、天動説から地動説への転換、ニュートン力学から相対性理論への移行、そして相対性理論から量子論への進化といった、パラダイムシフトに伴う抵抗感や疑念に類似しています。新しい価値観は、古い価値観の限界を超えて創発されるものであり、必ずしも既存の全てを否定するものではありません。しかし、変革が成熟するまでの間、ホロニカル・アプローチの実践者には忍耐力が求められます。また、ホロニカル的世界観に関する説明や資料の提供、理論的な解説が必要となります。
ホロニカル・アプローチの実践を客観的に捉える論理、新しい支援モデルの図式化や数理モデル化などが求められる場面も出てくるでしょう。実践者自身が、周囲との違いに伴う自己の違和感を契機に、その意味を論理化する必要性が生じるのです。
このような新しいパラダイムに基づく実践では、職場の同僚だけでなく、組織の上司からの同意を得る力が求められます。情緒的な理解だけでなく、新しい組織作りや場づくりのホロニカルな主体(理)として、客観的な論理の構築が必要となるのです。
自己意識の発達論は、被支援者や支援者個人だけでなく、有機体としての組織全体の自己意識の発達段階としても活用できます。通常、自律した個人として社会適応が可能と見なされるのは、自己意識の発達段階が第4段階に移行した人とされています。しかし、価値観が多様化・多元化し、指数関数的に変動する現代社会では、第4段階に達した人同士でも、同じホロニカル主体(理)を必ずしも共有しているとは限らなくなってきました。その結果、同一集団内や組織内で異なるホロニカル主体(理)を持つ者同士が共に生活することが、非常にストレスフルな状況になってきたと言えます。同じ言語を使っていても、お互いに異邦人、非常識同士と感じるような状況が生まれているのです。
このような現代人の抱える問題は、対人援助職の人々も例外ではありません。むしろ、対人援助の場では、ホロニカル主体の違いによる確執が熾烈になることもあります。したがって、組織論としては、その場にどれだけ自己意識の発達段階が第5段階の人がいるか、あるいは第4段階の異なるホロニカル主体同士であっても、不一致を受け入れ、不確実性や多元性に耐えながら、お互いが一致できる部分を創発し合い、新しい共生の場づくりに努めることが重要です。そうしないと、組織全体がバラバラになってしまう可能性があります。また、異なるホロニカル主体同士が相手を制圧することで組織を統一しようとすると、必ず排除される者と同一化を強いられる者が出てきます。多様性の一元化を図ることを良しとする絶対主義的なパワーによる支配が蔓延する可能性もあるのです。
ホロニカル・アプローチの組織内での実践では、第4段階の争いを、不一致の一致を楽しむような場づくりを通じて、異なる既知のホロニカル主体同士がお互いをホロニカルに包摂し合うことで、新しいホロニカル主体の創発が高まるような場づくりのノウハウを身につけていくことが必要です。
それは、ホロニカル・アプローチを被支援者に対して実践するだけでなく、組織を共にする人と内的・外的世界を共に俯瞰しながら、支援者自らと所属集団との不一致・一致の繰り返しが、ホロニカルな関係を形成することによって一致する方向に向かい、適切な自己と組織の自己組織化を促進していくことが課題となるのです。