
場所的自己は、過去の歴史に制約されつつも、新たな未来を切り拓こうとします。この過去からの制約と未来への創造という働きが、一瞬・一瞬、相反しながらも新たな自己を自己組織化しています。「一瞬」とは、過去と未来を包摂する刹那と考えられるのです。
自己は、過去と未来を包含した場所的存在といえます。たとえAさんとBさんが同じ場所で同時刻にXという現象に遭遇したとしても、AさんとBさんはそれぞれ異なる個性的自己を自己組織化していきます。それは、AさんとBさんの場所的自己の「今・ここ」における一瞬には、それぞれ異なる過去の痕跡と未来への展望が存在するからです。両者が全く同じ直接体験を共有することは、実際にはあり得ません。もし全く同じ直接体験を持つとするならば、両者はもはやAさんとBさんの区別なき幻想の世界に生きていることになります。
しかし、AさんとBさんが同じ現象に遭遇しても、その一瞬・一瞬の出あいにおいて、不一致の中から少しでも一致をお互いが求め合うことができれば、Aさんは、Bさんを取り込み、BさんがAさんを取り込もうとするところに、相互包摂的関係に基づく新たな世界を「今・ここ」において創り上げていくことが可能と考えられます。