-内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ-
ホロニカル・アプローチとは、“こころ”の深層から、身体、関係性や社会に至るまで、自己(部分)⇔世界(全体)の関係を自由無礙じゆうむげに俯瞰しながらアプローチするもので、フロイトやユング、家族療法、プロセス指向心理学、システム論、ナラティブ・セラピーに加え、西洋哲学から東洋思想までをバックボーンに、生命力の溢れる情感をともなった“こころ”そのものの体験を扱っていく心理相談の思想および技法のことです。

※ 詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著書の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ)」(遠見書房,2015)を参照ください。

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超俯瞰法

トランスパーソナル的な(自己超越的)視点から、“こころ”の内・外、または自己および非自己化された世界の全体を対象化し俯瞰する方法を「超俯瞰法」と呼びます。
面接時のクライエントを、<これまでの経緯をすべて知っている……なんでもお見通しの神様・仏様、空からずっとこれまでのことを見ていた鳥や、他界された信頼していた○○さんがみていたとしたら……>といったトランスパーソナル的存在を俯瞰する観察主体に仕立てる方法がとられます。

「なんでもお見通し・・」とすることで、鳥瞰図的な俯瞰だけなく、自由無礙な俯瞰が可能になるように配意されています。

さまざまな視点から“こころ”の内・外の世界がクライエントとカウンセラーの間で共有され、「これまに反復してきた悪循環パターン」が自然に眺望的なイメージとして浮かびあがってきたタイミングで超俯瞰法が実施されると、もっとも効果的な変容が可能となります。クライエントとカウンセラーが、人生の無常や悲哀を共有する時、面接の場いに「慈悲深い世界」が布置します。そして、その「慈悲深い世界」が、自己(自己およびあらゆる事象)を包み、自己と世界の対話がより一致する方向に向うことを可能とします。
超俯瞰法では、世界から自己を見るといったように視点が180度反転し、世界によって生かされている自己の存在に気づくことが多くなります。
ます。

超俯瞰法には、死と生の立場から人生を振り返る作業としての意味が含まれているといえます。

-超俯瞰法の事例-

30代の女性の道子(仮名)さんです。パニック障害ということで長く通院していましたが効果がないと感じ中断しています。通院中、完治して早く社会復帰したいという思いが強かったようですが、地下鉄電車内で過呼吸発作が頻繁するため、会社も退社してしまっていました。食後や気温上昇に伴う発汗作用に過敏になっていて、空気の淀みや人混みでは不安発作が出現する状態です。これまでの数度の心理面接で、完全主義的で厳しい倫理観を内在化してきた自分がいることを自覚し、少しあるがままの自己自身に対して自己肯定的な感覚を持ち始めていました。紹介する面接は、初回面接から2カ月程度過ぎた頃、登録していた派遣会社から面接の打診があり不安を示していた頃のものです。

※以下、クライエント:Cl、カウンセラー:Coと略記。

Cl:「前は友達から連絡がなくなって不安だったけど……自分から積極的に前向きに動いていたら、向こうから電話がやってきて……」「派遣会社に登録だけしていたら、○○の話がきた……どうしましょう。明後日面接だけど、もし来てくださいといわれたら……」(と不安そうな態度となります。)

Co:<何か不安でも>
Cl:「もし、また仕事中に発作が起きたら……」
Co:<仕事中に発作が起きたことがあるのですね>
Cl:「上司に怒鳴られたり、食後人混みで暑苦しいものを感じ、息苦しくなって、過呼吸状態になった」「閉じこめられるような感じで、そこからでられなくなった感じ」
Co:<上司に怒鳴られたり、食後人混みで暑苦しいものを感じ、息苦しくなって、過呼吸状態になった時には、何か閉じこめられるような感じになって、そこからいつもでられなくなる感じになるんですね>

※この時、Coの“こころ”の中で、Clさんの息苦しい場面が、映画のシーンのように浮かび上がってきますが、Coの視点は、一気に飛翔して鳥瞰的構図の位置となります。その結果、息苦しさに苦悩する Clさんを、あたかも眼下に包み込んでいるかのようなトランスパーソナル的立場がCoに布置します。この感覚を手がかりにして、超俯瞰法を実施します。

Co:<これまでの出来事をすべてをお見通しの神様・仏様や鳥がいるとしたら、仕事についた時、また発作になったらどうしようと不安になっている自分をこのオカリナとしたらこのオカリナに対してどのように感じ、どのようにして支えてあげますか?>
Cl:「大丈夫と思うけど、不安だったらやめたら」「私は大丈夫だと思うけど、心配していなくていいと思うけど……もし不安だったらやめたら」

※ Clさんに神様・仏様・鳥の外在化を求めると室内にある「鳥」の小物を選択します。
そこでCoは、「鳥」をCoの前にClさんに向けて置き、「オカリナ」をClの前にCoに向けて置きながら、次のように指示します。※以下、今の Clをオカリナの「オ」で略記。

Co:<じゃあ、なんでもお見通しの鳥から、「大丈夫と思うけど、不安だったらやめたら。私は大丈夫だと思うけど、心配していなくていいと思うけど……もし不安だったらやめたら」といわれたらどう感じ、どのようにこの私(オカリナ)は振る舞いますか?>
オ:「でも働きたい」

※鳥とオカリナを入れ替えながら、次のようにいいます。
Co:<じゃあ、何でもお見通しの鳥は、「でも働きたい」といわれたらどう感じ、どのように振る舞いますか?>
鳥:「じゃあ、やってみればいい」

※鳥とオカリナを入れながら、次のようにいいます。
Co:<じゃあ、何でもお見通しの鳥から、「じゃあ、やってみればいい」と言われたら?>
オ:「うん。そうだね」

※鳥とオカリナを入れ替えながら、次のようにいいます。
Co:<じゃあ、「うん。そうだね」というのを知った、なんでもお見通しの鳥は?>
鳥:「うん、とりあえず、受かるかどうかわからないから、面接をとりあえず受けたらいいじゃん」

※鳥とオカリナを入れ替えながら、次のようにいいます。
Co:<じゃあ、こっちは?>
オ:「うん、そうする。わかったよ」

※鳥とオカリナを入れ替えながら、次のようにいいます。
Co:<じゃあ、こっちは>
鳥:「私が見ているから」

※鳥とオカリナを入れ替えながら、次のようにいいます。
Co:<じゃあ、こっちは>
オ:「ちゃんと見ていてね」

※入れ替えながら、次のようにいいます。
Co:<じゃあ、こっちは>
鳥:「ちゃんと見ているから大丈夫だよ」と、羽をのばしてオカリナを包むようにします。

※鳥とオカリナを入れ替えながら、次のようにいいます。

Co:<じゃあ、こっちは>
オ:「ありがとう」と、羽の中に包まれて安心します。
Co:<じゃあ、とりあえず、明後日受けてみたらいいじゃない>。笑い出すCl。

※次の面接で、「最近、激変している自分を感じます。友人にも変わったといわれる」と笑います。

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。