-内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ-
ホロニカル・アプローチとは、“こころ”の深層から、身体、関係性や社会に至るまで、自己(部分)⇔世界(全体)の関係を自由無礙じゆうむげに俯瞰しながらアプローチするもので、フロイトやユング、家族療法、プロセス指向心理学、システム論、ナラティブ・セラピーに加え、西洋哲学から東洋思想までをバックボーンに、生命力の溢れる情感をともなった“こころ”そのものの体験を扱っていく心理相談の思想および技法のことです。

※ 詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著書の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ)」(遠見書房,2015)を参照ください。

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スポット法

人の気持ちというものは、複雑です。「許せない」という怒りを口にしても、怒り以外の気持ちの実感を求めると、「悲しみ」があり、さらに怒り・悲しみ以外の気持ちに焦点化すると、「寂しい」という気持ちがあり、それ以外の気持ちに焦点化すると、「冒険したい」という気持ちが顕れてきたりすることがあります。

スポット法では、こうしうた複雑な気持ちに揺れる “こころ”の全体像を浮かび上がらせることができます。そしてある程度,複雑な気持ちが出つくしたあたりで,もっとも大切にしたい気持ちを,再度スポットの中央部(“こころ”の中心)に持ってくることによって,複雑な気持ちの再統合を促すことができます。

A4程度の用紙と外在化用の小物があればできます。 まず,A4の用紙の中心に直径 10 ㎝ほどの円を描きます。この円を意識のスポットライトを浴びる場とします。

※カウンセラーをCo、クライエントをCl(牛のぬいぐるみ)とします。

 

Co:<許せないという気持ちがわき上がってくるのですね>

Cl:「ええ」

Co:<それでは、許せないという気持ちを、この部屋にある小物を使って表現するとしたら、どれがいいですか?>

Cl:“ドラゴン”の小物を選択する。

Co:<では、この「許せない」という気持ちの“ドラゴン”を、スポットの真ん中に置きますね>

Cl:「ええ」

Co:<それでは、その「許せない」(“ドラゴン”)という気持ちを、少し“こころ”の中心から、どこか脇に遠ざけるとしたら、どこまで遠ざけますか? 円の線あたりですか、それとももっと遠くテーブルの端ですか? いや、テーブルの下など目にもつかないところがいいですか? 自分で気のすむところまで遠ざけてみてください>

Cl:テーブルの端に、「許せない」(“ドラゴン”)を移動させる。

CO:<では、次にこの“こころ”のスポットには、どんな気持ちが湧いてきますか?>

Cl:「悲しい」

Co:<では、その「悲しい」という気持ちを、この部屋にある小物を使って表現するとしたら、どれがいいですか?>

Cl:“フクロウ”を選択し、スポットの中央に置く。

Co:<では、その「悲しい」(“フクロウ”)という気持ちを、少し“こころ”の中心から、どこか脇に遠ざけるとしたら、どこまで遠ざけますか?>

Cl:“ドラゴン”とは、逆のテーブルの端に移動。

CO:<では、次にこの“こころ”のスポットには、どんな気持ちが湧いてきますか?>

Cl:「寂しい」

Co:<では、その「寂しい」という気持ちを、この部屋にある小物を使って表現するとしたら、どれがいいですか?>

Cl:“オカリナ”を選択し、スポットの中央に置く。

Co:<では、その「寂しい」(“オカリナ”)という気持ちを、少し“こころ”の中心から、どこか脇に遠ざけるとしたら、どこまで遠ざけますか?>

Cl:Clの手前に移動。

Co:<では、次にこの“こころ”のスポットには、どんな気持ちが湧いてきますか?>

Cl:「冒険したい」

Co:<では、その「冒険したい」という気持ちを、この部屋にある小物を使って表現するとしたら、どれがいいですか?>

Cl:“片手をあげる人”を選択し、スポットの中央に置く。

Co:<では、その「冒険したい」(“片手をあげる人”)という気持ちを、少し“こころ”の中心から、どこか脇に遠ざけるとしたら、どこまで遠ざけますか?>

Cl:Coの手前側に移動。

Co:<では、次にこの“こころ”のスポットには、どんな気持ちが湧いてきますか?>

Cl:「・・・もう何も浮かびません」

Co:<そうですか。「許せない」という怒り以外には、「悲しみ」があり、さらに怒り・悲しみ以外には、「寂しい」という気持ちがあり、その奥には、「冒険したい」という気持ちが湧いてきたようですね。許せないと言われていたけど、もっともっと複雑な気持ちがおありなんですね>

Cl:うなずく。

Co:<それでは、複雑な気持ちの中で、改めて、今,一番、スポットの中央に持ってきたい気持ちはどれですか。それを選んで、もう一度、スポットの中央に置いていただけますか>

Cl:「冒険したい」の“片手をあげる人”を選択して、スポットの中央に置く。

Co:<それでは、「冒険したい」という気持ちを中央に置いた時、他の「許せない」(“ドラゴン”)(「悲しい」(“フクロウ”)、(「寂しい」(“オカリナ”)の位置は、今のままですか? それとも何か変化しますか。もし変化するならば、それぞれを置き直してみてください>

Cl:自分自身の気持ちをひとつひとつ確かめるようにしながら、すべて、円周にそって円周から少し離れたところにほぼ均等の間隔をあけて置きます。

そして、
Cl:「どっかに本当に旅してみようかなあ」と思わず呟きます。

過去の出来事にとらわれていた面接開始時の怒りは鎮静化し、気分の安定化とともにポジティブな未来に向かう考えに微妙に変化していったようです。スポット法では、気分(感情)の変化を促しながら、考え方(思考)の変容をごく自然な形で促すことができます。

 

※詳しくは、心理相談室こころ室長 定森恭司著の「ホロニカル・セラピー:内的世界と外的世界を共に扱う総合的アプローチ」(遠見書房,2015)、または、定森恭司・定森露子共著の「ホロニカル・アプローチ:統合的アプローチによる心理・社会的支援」(遠見書房,2019)を参照ください。