無意識的行為の意識化法
人は心的危機に陥った時、ほとんど意識することなく、ある種の自己防衛的行動を自ずととるものです。
例えば、ひどい罵声・否定的言動を毎日浴びせられ、時として暴力をふるってくる相手と何らかの理由でどうしても離れることができない場合などでは、ほんの少しでも相手に反発しますと、よりひどい仕打ちが返ってくることを学習します。その結果、いつも相手の機嫌を悪くしないように従順で服従的な言動をとるようになることなどです。
しかし、こうした言動も何も考えることなく、ただ受動的にいつまでも引き受けてしまっていると、卑屈な気分が慢性化し、罵声・否定的な言動がすり込まれてしまって、自ら自己卑下的否定的な認識になってしまうものです。
ところが、「卑屈な思いに苦しみながらも、過酷で厳しい状況に耐え抜いてきた今の自分」の視点から、これまで無意識のうちにとってきた言動のほとんどが自己防衛的なサバイバル術であったことに気づくと、むしろ自信回復やエンパワーメントにつながることがあります。
こうした気づきを促進する方法を、ホロニカル・アプローチでは「無意識的行為の意識化法」と呼んでいます。
無意識的行為の意識化は、「こころの壁を強くする」と言い換えられるかもしれません。
-無意識的行動の意識化の事例-
帰宅時間が遅くなり、父親から問答無用で叱責を受けた中学1年生の男子です。
※以下、クライエント:Cl、カウンセラ-:Coと略記。
Co:<そんな目にあったら、いいわけをしたくなると思うけど、その時、実際には、どう振る舞ったの?>
Cl:「あいつはもう怒り出したら止まらないので、その場は、じっと黙っていて、あとで自分の部屋にいって思いっきり枕にあたった」
Co:<そうか、いいわけをする代わりに、その場は我慢して、自分の部屋にいってから枕に当たり散らすことで、よく耐え抜いたね。すごいね。今度もその方法を使えそうかな?>
Cl:「うん」