3次元の対話
ホロニカル・アプローチでは、説明・教育・助言・分析・解釈・洞察も必要に応じて行われますが、それらを含んでそれ以上に重視しているのが「対話」です。
対話には、3つの次元があります。
①内的対話:自分と内的世界との対話です。
②外的対話:自分と外的世界との対話です。
③俯瞰的対話:内的世界や外的世界とトランスパーソナル的存在との対話です。
内的対話には、いろいろな自分の側面や気持ちとの対話があります。強気の自分、弱気の自分、責める自分、責められる自分、傍観する自分・・・怒り、悲しみ、無力感、喜び・・・といろいろとあります。心的症状や心的課題と密接に絡み合った身体的症状や身体的違和感に焦点化する場合も含まれます。これらの中には、対話の前には必ずしも意識されていなくて、対話の中ではじめて意識されてくるようなものもあります。
外的対話の相手には、人(家族、友人、知人、他者)、動物、植物、物など、いろいろとあります。これらの中には、対話の前には必ずしも意識されていなくて、対話の中ではじめて意識されてくるようなものもあります。
俯瞰的対話とは、内的世界や外的世界をめぐるトランスパーソナル的存在との対話のことです。トランスパーソナル的存在とは、「空からすべてのできごとを鳥瞰している鳥」「すべてを何も評価することなく、ただあるがままに観察する視点」「なんでもお見通しで、すべてのことを知っている神様・仏様や精霊」「亡くなった家族や祖先」といったものです。個人のレベルを超越した第3者的な超個的存在との対話の中で、新しい生き方の発見・創造が、しばしば自然に起きます。
ある心的症状やある心的問題が頑固に反復する時には、内的対話、外的対話、俯瞰的対話の3つの次元間の関係が無関係でバラバラだったり、あるひとつの対話の次元にこだわり、他の対話の次元から閉じこもってしまっている現象が見られます。
3つの次元の対話は、個別面接、夫婦合同面接や家族合同面接でも活用されます。
ホロニカル・アプローチでは、3つの次元の対話が、それぞれ相互に意味連関をもったものとして関連づけられていくことを促進します。カウンセラーも関連づけのための対話に参加していきます。
3つの次元の対話の組み合わせの考え方は、来談者中心療法、精神分析的アプローチ、認知行動療法、家族療法、解決志向ブリーフセラピー、トランス・パーソナル心理学をはじめ百家争鳴的状況にある今のさまざまな心理臨床の理論や技法を、観察するもの(観察主体)と観察されるもの(観察対象)の視点から再統合を試みているホロニカル・アプローチの特徴をよく示しているものといえます。
3つの次元の対話による新しい意味連関の発見・創造が、新しい人生を切り開いていきます。