公認心理師、臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士・・・など心理社会的支援に関わる資格制度が充実し、医療・教育・産業・福祉などにさまざまな領域にわたる多職域の専門家たちによる連携やチーム対応も増加しています。しかし、生きづらさを抱えた人は、むしろ、専門家が増える以上に、さらに増加するというのが現実化しているのでないのでしょうか? すくなくともここ何十年の取り組みは、問題とする人と問題とされる人の増加ばかりを促し、結果的に、あまり効果を奏しているように思えないのです。
心理社会的支援の最先端で多くの事例に携わってきた経験からすると、次のようなことが影の問題としてあると思われます。
①「親密な他者」ともいえる身近なキーパーソンの不在化による“こころ”の悩みの専門家への囲い込み現象の加速度化。効果的支援のためには、週1回から、せめて隔週1回の関係を維持することのできる身近なキーパーソン(非専門的専門性もった人)が必要。
②血縁・地縁関係の崩壊に伴う社会的人間関係の無縁化・疎遠化の加速度化。キーパーソンを中心とした局所的なネットワーク化の再編成が必要。
③カウンセリングマインドによる傾聴支援だけではなく、具体的問題の解決に向かっての適切な支援が必要な人の増加。
④心理社会的問題の個人病理化と医療化への傾斜。医療モデルへの過度な依存を見直し、多領域にわたる社会包括的支援モデルを構築することが必要。
⑤当事者のキーパーソンでもないにも関わらず、当事者の同意を得ずに安易に他機関にリファーを勧奨したり、個人情報に関する情報収集ばかりする支援者の増大。当事者参加型のネットワーク化の再編成が必要。
⑥関係機関の連携化とともに個人情報の漏洩と管理化の常態化。守秘義務の厳守と、連携の度ごとに、当事者の同意を得る作業の常識化を図るか、当事者参加型の連携を推進する。
⑦精神科・心療内科系の一部における過剰診断や、多剤大量処方の長期服薬の問題の顕在化。社会的包括支援に協力的な医療機関との連携の強化が必要。またできれば過剰な多剤大量処方の減薬治療にも協力的な医療機関との連携も喫緊の課題。
20世紀と今の時代の心理社会的支援を比較検討する時、これまでの対策は、専門家中心に偏っていて、当事者不在の支援対策ではなかったかという反省があります。そしてこうした潮流は、生きづらさを抱えた人たち自身が、主体的に問題解決を図っていく力をどんどん剥奪してきてしまったのではないかと危惧されるのです。これからの時代は、当事者中心の社会包括的支援システムの構築と、日常社会生活におけるキーパーソンの充実化が必要と考えられるのです。