2項関係と3項関係

ホロニカル・アプローチの一技法のホームシミュレーションの一場面の写真
ホームシミュレーション法

親子関係、男女関係、友人関係、治療関係、指導関係、支援関係などの対人関係における2項関係が癒着しすぎないように心がけ、ほどよい関係になるためには、3項関係に当たる対象をしっかりと2項が共有するような関係を構築することが大切になります。

過度に親密な2項関係は、誇大的万能的に自己愛を満たすような照らし返しを常に親密な他者に希求し、それが得られないと憤怒しやすい自己を育くみやすく、結果的に適切な社会的自己の発達を阻害します。そこで必要になるのが3項関係なのです。ある対象CをAさんとBさんが共有する関係の構築です。対象Cは、人、物、出来事など、対象化できるものならば、何でもよいといえます。

Aでもなく、Bでもない対象Cが媒介となって、AとBの融合的関係の分離個体化が促進され、AとBが相互に独立した個として確立されていくことが可能となるのです。媒介Cがあることが、AとBの適切な縁起的包摂関係(ホロニカル関係)を促進するといえるのです。

本来、自己と非自己(他者を含む)の関係は、1対1ではなく、1対多と考えられます。

親子関係に代表される2項関係は、独占欲によって融合密着化し易いといえます。しかし、そうした融即的関係の破綻が分離固体化の契機でもあるのです。AがAとして自律的に存在するためには、AとBの融即を切断するCが必要となります。Cという媒介なきAとBの対立は、反発しあう磁石のような骨肉の争いになります。それを防ぐためには媒介Cがあることによって、AとBは、相互に自律した他者的存在(C)にもなりうることを促進するのです。Cは、親密な関係にある時のAとBにとっては他者ですが、AとCが親密な関係にある時には、BがAとCにとっては他者になります。2項関係が3項関係にもなりうるという対人関係の意識の芽生えが、そのうち他者が多数になっていくと社会的意識を育むくみ、社会的自己の発達を促すことになります。そしてこうした多数の他者がもっと一般化されていくと「社会的な世界」になっていきます。

ホロニカル心理学に基づくホロニカル・アプローチでは、たとえ1対1の個別面接であっても面接関係が、3項関係になることをとても重視します。その実践的な具体的顕れが、外在化対話法超俯瞰法場面再現法ホームシミュレーション法スポット法三点法などの技法として結晶化しています。