
「自立」とは、収入を得ることでもなければ、なんでも自分ひとりでできるようになることでもありません。
「自立」とは、必要な時に援助を受ける権利を行使できる力を持つことといえます。
適切な環境の下に育てられている赤ん坊などは典型例です。赤ん坊は、泣くという行為でもって大人に対してその生存権を十二分に行使することが保障されていることが大切と考えられます。泣いてもなんら適切な養育が受けられないのが不適切なことと同じです。
適切な時期に適切な助けを求める権利が十二分に保障されている社会が豊かな社会と考えられるのです。こうした社会的倫理や価値が各自に内在化されることによって、はじめて真の自立が可能になると思われます。
こうした考え方は、障害児・者の権利擁護の長い運動の歴史から学ぶことができます。障害者の権利擁護運動は、保護を求めることにあったのでなく、むしろ保護されるだけの生活を不服としてはじまっているのです。ポリオに罹患していたカリフォルニア大学バークレー校に通っていたエドワード・ロバーツの「『自立』とは、自分で収入を得て、自分で何でも行えることではなく、自分の人生をどうしたいかを自分で決めること。そのために必要な支援を社会に求めるのは当然の権利である・・・」(渡辺一史,2013)という語りには耳を傾けるべき価値があります。
文献:「こんな夜更けにバナナかよ」:渡辺一史著.文春文庫.2013年. p202