
ホロニカル心理学において「我」は、外的世界への志向を担う外面(以下、外我)と、内的世界への志向を担う内面(以下、内我)の二重構造によって形成されると考えます。ここで重要なのは、外我と内我が固定的で独立した実体ではなく、歴史的・社会的文脈のなかで絶えず変容する動的な作用として位置づけられる点です。
この基本的な枠組みから、歴史的・社会的変動と外我/内我の機能的推移の関連を検討することにより、次の作業仮説を導出できます。すなわち、「加速度的に進行する高度情報化社会は、外我の機能を相対的に肥大化させる一方で、内我の機能を相対的に萎縮・衰退させる傾向を強めている」という仮説です。ここで言う「肥大」と「萎縮」は単なる量的な変化にとどまらず、注意資源の配分、価値づけの傾向、評価指標の偏在といった質的側面をも含んでいます。
こうした機能的偏重の結果として、外的世界への適応が過度に重視され、内的世界に潜在する不安や葛藤を直視する営みが周縁化されがちになります。その過程で、感性よりも認知や知性が優位に置かれる「デジタル的認知様式」が強化され、さらには「我」と「他我」、「我」と自然、「我」と世界、さらには「我」と宇宙とのあいだに存在する生き生きとした繋がり感が希薄化する人々が増えていると推測されます。
ただし、本見解は社会変動に関する一般的傾向を描写する理論的仮説であり、個人差や文化差、レジリエンス要因を排除するものではありません。むしろ、外我と内我の動的均衡をいかに回復・再編していくかという臨床的・実践的課題を可視化するための作業枠組みとして提示するものです。