自己はいろいろな出来事に遭遇する中で、複雑で豊かな情緒を育みながら自己を発達させると考えられます。しかし、暴力、威圧・威嚇、罵声、否定など苛酷な環境に晒され、安全で安心できる環境に生きることが出来なかった人は、複雑な感情からある一部の気持ちを切り離し、あたかもなんでもなかったかのように振る舞います。切り離し、隔離、区分け、解離といわれる現象です。しかし、切り離し、隔離、区分け、解離された断片的自己の体験の記憶は、実際には自己内に残ったままです。そのため、ある特定の類似体験に遭遇すると、突然、現在と過去の区分を失い、スイッチ・オンするがごとく態度が豹変したり、自己同一性が失われたり、記憶が飛んだり、過覚醒になったり、凍結反応がでたり、離人的になったりします。まさに、「心ここにあらず」となります。
こんな症状が出現したら、周囲は慌てず、ほどよい距離をとりながら、今・ここの場が、混乱する人にとってトラウマに遭遇した過酷な過去ではなく、安全で安心できる場であることが実感できるように振る舞うことです。
今・ここの場の安全で安心が体感でき、我を失ったような心身が、暖かく包み込まれるような場において、切り離し、隔離、区分け、解離されてきた未処置の断片的自己を全体的自己への統合を促進することが可能になります。
このことが可能になると、当事者にとっては、過去の過酷な体験の記憶世界から、あたかもこの世に生還するかのような出来事となります。