22歳の大学生(架空事例)に対する「ただ観察」技法の実施事例

AIで作成

架空事例:いろいろな事例を組み合わせて創作されています。

22歳の女性、Nさんは、大学在学中でありながら、様々な身体症状に悩んでいました。これまでに様々な療法を受けてきましたが、症状が改善せず、学業もままならなくなり、心理相談室へと足を運びました。以下、カウンセラーは、Coと表記。

Nさんは、「英語検定試験を辞めようかと・・いろいろな人(父親の会社の通訳試験を合格した人や友人)に相談したら、今は大学のために勉強をした方がいいと言われ、今年は辞めて、今は大学のための準備期間にあてようと思っています」と語り始めました。

しかしNさんは、15歳頃からずっと頭痛に悩み、全国の大学病院の精神科や心療内科を受診しさまざまな療法を受けたり検査をしたりしてきましたが、うまく改善しないとのことでした。また、「某クリニックの医師には、薬をもらっているけど、あまり使いたくない。頼ってしまうし・・」と投薬治療への抵抗感をあらわにします。

そこでCoは、頭痛への焦点化と共有化を図ります。頭痛は、「目の奥から額にかけて」「ズキズキするときもあれば、身体を動かす度に痛くなる時がある」「幼稚園の時から、何故か日曜日の朝になるとものすごく痛くひとりで悩んでいた」「太陽の光を強く感じると痛くなる。A大学病院では不安から来ているだろうとのことだった」「検査しても異常はでない」「1~2週間続く時があるが、たまに薬を飲んで保っている感じ」「16歳の時からはずっと変わらない」「16歳の時は頭痛に息もできずという感じ」「夜、出かけたりするとズキズキする」ということです。

<今(面接中の意味)、頭痛は、どんな感じですか?>「目の周りがずきずきする感じです」。
<それでは、今から、『ただ観察』(ホロニカル・アプローチ技法のひとつ)という方法を試みたいと思います>と、『ただ観察』の簡単な説明をし、実施の同意を得ます。まずは閉眼を求め、ズキズキ感に焦点化するように誘います。そして、<ズキズキ感を、ただひたらす観察しているとき、何か重さ、痛さ、形、色などそのズキズキ感をたとえるとどうなるのか、何かわかってきたら教えてください>と教示します。このとき<症状を、なんとかしようしたり、その原因を探るとか、一切しないで、何かわかるまで、ひたすら、ただ観察し続けてください>と指示するのがポイントです。

Nさんは、「ただ観察」をはじめます。すると、しばらくするとイメージがはっきりしてきたようで、「丸い重い鉄の塊のようなものが、目の上に3つある」「これ位の大きさ (人差し指」と親指で〇を作って大きさを示します。<すると、丸い重い鉄の塊のようなものに対して目は押されている感じですか、それとも押し返そうとしていますか、その動きがわかりますか?>「眼球を閉じたいけど、それをあけるために力が入っている感じ」「重い方が7割で.・・」<重くなっていくと、どうなりそうですか >「自分ひとりだけなら閉じるけども、毎日でかけるから必要があるから開ける感じ」と、不眠をめぐるせめぎ合の再現を共有します。すると、「それより、今はもっと額の方に痛みを感じる」と症状の位置が移動したことを訴えます。

そこでCoは、無理をせず、痛みの移動に自然に従う感じで痛みに集中していくこと指示します。すると、「額の真ん中のあたりで頭痛という感じの痛みがある。全体から奥にかけて発信されている」<発信されているもののイメージ化>を促進します。「電気のような感じ。ちょっとしたことですぐに反応して痛みを感じる」「風呂からあがると絶対痛みを感じる(記憶の回想になる)」「ズキズキではなく、後でもっとひどくなる重い感じ。比較的浅いところに中心がある。それも目の上の重いものより少し大きく、にぶい痛み」 <瞼の上の重みと額の重みのいずれかをいま扱うとしたらどっちを選びますか>「額の重み」。再度額の重みへの集中を指示します。<ずっと重く、集中すると特に重くなる感じ・・ゴロゴロしてくる」<そのままずっと集中するとゴロゴロ感はどうなっていきますか> 「少し柔らかくなってきて、 鉄が少し柔らなくなってきて・・あっ、なんか形が変わってきてきた。少し軽くなってきた」「灰色から明るくなる。塊も、アニメのバウバウのように、ぐにゃぐにゃになってきた」<灰色と重く鉄のような塊が少し明るくなって動きだし、バウバウのようにぐにゃぐにゃしてきて動きだしているものは、この先どうしたがっていますか。それがしたがっていることをしっかり観察してみてください。そして何かわかったら教えてください> 「それは動きたがっている。まわりに拡がって黄色くなってアメバーみたいに、散らばりたがっている。小さくなって拡がって・・・」<それがしたがっていることを応援する感じで納得のできるところまでやってみてください。そして納得できるところまでいったら、ただ観察を終えて、目を開けてください> 。ずっとNさんは、しばらくひとりで試みた後、開眼します。<今の感じは?> 「少し軽くなりました」と、はじめての痛みの消失体験に驚くとともに明るい顔になります。

その後、同じような身体症状に対して、<ただ観察>を数回ほど実施していくなかで、Nさんは、症状を取ろうとするより、症状を受け入れながら、ただ観察しているだけで、症状が自然に変容していくことを身をもって体感した頃、「あとは自分でやってみます」と終了となりました。

 

解説:
ある小さな部分的な身体症状に対する自由無碍の俯瞰(「ただ観察」によるホロニカル・ボディワーク)は、身体症状に対するNさんの態度の変容を契機を促進するだけではなく、Nさんの自己及び世界に対する生き方というより大きな変容を促進しいくことをこの事例を通じて学ぶことができます。

Nさんの症状を無くそうする自助努力は、周りからみれば強迫性を帯びたものでした。ABCモデルでいうA点固着状態です。Nさんは、常日頃からリラックスすることができず、過緊張状態にありました。しかし、Nさんのこうした傾向は、実は、小学校の時代の苛酷ないじめ体験から不登校になった自分を、なんとしでも乗り越えたいという動機が深く絡み合っていたことが明らかになっていました。何事に関しても自己克己的努力を怠らないNさんにとって、ちょっとした身体症状は、目標に向かって生きようするNさんにとっては、あたかもいじめっ子のような打倒すべき対象だったわけです。しかし、<ただ観察>を通じて、身体症状に対する新しい態度の獲得は、今は、もう、もっと力を抜いても安全で安心だという身体感覚への目覚めとなり、Nさんの新しい人生の生き方への変容につながっていきました。

Nさんの事例に限らず、ある身体症状を観察対象とするときの観察主体の態度と、自己及び世界を観察対象とするときの観察主体の態度が自由無礙の俯瞰といったように無批判・無評価・無解釈態度が布置する時には、被支援者の観察主体と観察対象をめぐって、自己相似的なフラクタル構造が発見される場合があります。こうした事例の場合、観察主体の「ただ観察」が、自己と世界との関係のホロニカル関係を促進させる結果、適切な自己の自己組織化を加速化させる現象が起きやすくなります。