
小学4年生の男の子H君は、小学1年生の途中から学校を休みがちになり、3年生になると完全に学校を欠席するようになってしまいました。
H君は母親と二人暮らしです。母親は朝早く仕事に行きます。H君は、毎日昼頃に起き、母親が仕事に行く前に作ったご飯や味噌汁、母親が買っておいたカップラーメンやパンやおにぎりをひとりで食べるような生活でした。夜ご飯は、たまにお母さんと2人で食べるときもありましたが、20時過ぎに食べていました。
H君には、母親の要望もあり、市から訪問相談員(60代の男性)が週1回家庭訪問による支援が開始されました。訪問相談員は、ホロニカル・アプローチのスーパーバイザーの提案を受けて、毎回一緒にインスタント袋麺明を作ることを通じて、子どもとの親密な関係を築くことを心がけました。しかし訪問相談員は、「男子厨房に入らず」という常識で育った世代のため、ラーメン作りは子どもと同じく初めての経験でした。
3回目のラーメン作りのときに、訪問相談員が「ラーメンは美味しいか?」と尋ねました。が、しかしH君は、相談員の期待を裏切るように、「別に」とそっけなく答えるだけでした。
しかし、その後、H君と訪問相談員は、ラーメンの具にゆで卵を入れたり、シナチクを加えたり、ネギやアサリを入れたり、野菜を加えるなど、工夫を凝らし、ラーメンづくりを楽しむようになってきました。そして3ヶ月が過ぎた頃、二人でお気に入りのラーメンができたとき、H君は、思わず「これは美味しい」と声を出しました。この頃から、H君は、訪問相談員を玄関で待つようになり、喜怒哀楽の表情や積極的な姿勢を次第に見せるように変化してきました。そんな頃でしや。H君は、訪問相談員に、「一人で食べるときは寂しい」と小さな頃で呟き、微かに涙を流したのです。それまでは、寂しさすら感じず、ただ生きるために食事をしていただけだったのが、人と一緒に味を味わいながら食事をする喜びに目覚めた時、唯一の家族である母親と食事を共にしていないことに、はじめて寂しさを感じるようになったようでした。
その後、H君は寂しさを母親にも訴えるようになりました。母親は彼がいい子で助かる子だとばかり思い込んでいましたが、子どもの思いを知ることで、昼の弁当を作ったり、休みの日には子どもと一緒に料理をするように変わっていきました。すると不思議なことに、昼間には給食を食べに行く方が、母親の負担も減り、その方がいいと思うようになり、なんと給食を食べにいくために登校するように変化していったのでした。