トラウマに苦しむ人々の心の傷は、単なる傾聴と共感だけでは癒すことができません。時には、これらの方法がトラウマ記憶を不意に呼び覚まし、状況を悪化させることさえあります。そこで必要とされるのは、トラウマ反応に留意した段階的なアプローチです。
第1段階では、トラウマに苦しむ人が、物理的にも精神的にも安全で安心できる環境にいることが重要です。支援者や周囲の人々は、そのような環境を整えることに尽力します。
第2段階では、トラウマ反応が活性化した際に、それに圧倒されずに一時的に鎮静化できる手段やリソースを、被支援者と支援者が共有することが求められます。過去のトラウマ記憶が想起されてしまい、過覚醒や低覚醒になったときに、「今・ここ」が安全かつ安心な場であることに目覚めるための方法の開拓です。深呼吸をする、外を見る、楽しい記憶を想起する、今・ここの温度を感じる・・・、現在が過去のトラウマによって支配されてしまった被支援者を、今・ここの安全で安心できる場に引き戻すための手段の構築です。被支援者と当事者とが支援者が共創的チームを構築して、みんなでいろいろと開拓することも、そうした共創的支援の場が、被支援者にとっての安全基地になります。
第3段階では、対処できないトラウマ記憶に関しては、ABCモデルに基づく技法を用いて、過去と現在が混ざり合ったトラウマ記憶の再処理を行い、トラウマ体験を過去の出来事として現在の自己に統合するプロセスを支援します。トラウマに特化した対応といえます。
第4段階では、日常生活の中で、トラウマ体験を契機に、むしろ新たな自己の自己組織化を促進し、過去のトラウマ体験を乗り越えることを目指します。