被支援者が抱える生きづらさの語りの背景にあるものを、支援者も共同研究的に了解しあいながら、ただの原因探しだけに拘ることなく、少しでもより生きやすくなる道を発見・創造していくような心理社会的支援が、ホロニカル・アプローチです。 この時、支援者の立ち位置は、生きづらさを共有し、一緒により生きやすい人生の歩み方を模索する共同研究的協働者です。被支援者と支援者の関係は共創的関係です。
心理社会的支援者の観点は、被支援者の内的世界ばかりではなく、外的世界にも向けられ、内的世界と外的世界の狭間に揺れる生きづらさを扱います。 このとき、内的世界と外的世界については、被支援者と支援者の関係の刻々の変容を含めて俯瞰的に扱う対象となります。
生きづらさをめぐって生じてくる多層多次元にわたる関係の悪循環パターンを俯瞰しながら、少しでも悪循環パターンが変化していくような道を模索していきます。 このようにホロニカル・アプローチは、内的世界に対する心理的支援と外的世界に対する社会的支援を統合的に扱うことを可能とするモデルの構築をめざしています。
こうした観点は、治療モデル、教育モデルや発達モデルとは異なります。むしろそれらを包摂的していくような統合化を志向するモデルの構築となります。 この時、統合化を希求することはあっても、統合化すべきとか統合化すると論じているのではありません。それぞれのモデルは、それぞれのモデルを形成する土台となるパラダイムが異なります。こうしたパラダイムの差異を越えて包括的に扱うためには、特殊性を脱構築することを可能とするための包括モデルの構築の探究が必要ではないかと問題提起している立場です。
それぞれのモデルが得意とする特殊性を活かしながらも、他方で、パラダイムの差異からくる混乱を避けるために、より一般性をもった包括モデルを探究していく姿勢です。 一般性と特殊性といった相矛盾するものを統合しながら支援を行うパラダイムの構築です。ホロニカル論は、こうした統合的モデルのひとつとして、各パラダイムの差異は観察主体と観察対象の組み合わせの差異として包括的に捉え直します。特殊とは、観察主体と観察対象の関係をある固定した枠組みから徹底して観察対象を研究することを意味した時に発見される理の研究といえます。それに対して、一般性とは、観察主体と観察対象の組み合わせの差異を俯瞰する枠組みから明らかになる理の研究といえます。
そもそも“こころ”の働きに、多様化・特殊化の働きと、一般化・統合化の働きがあると考えています。 すなわち観察主体と観察対象をめぐる多様性と統合性は、“こころ”の働きと不可分一体と考えられるのです。