トラウマ・インフォームド・ケア:包括的支援への転換

福井大 友田明美教授の研究より

長期間にわたる暴力や暴言、威嚇、威圧、否定といったパワーによる支配は、複雑性PTSDを含む多くの精神的症状や障害の原因となることが、科学的および学術的研究によって明らかにされています。このようなパワーによる苦悩は、人間関係だけでなく、法的、政治的、経済的、思想的、道徳的な領域にも及ぶと考えられます。

この最新の知識に基づき、トラウマ反応に適切に対応できる能力を、被支援者だけでなく支援者も持つべきだという認識が強調されてきています。その代表例が、トラウマ・インフォームド・ケアのパラダイムの理解です。このパラダイムは、トラウマを含む人間の苦悩を、暴力や体罰を必要悪とする旧来の考え方や、個人の責任や病理に焦点を当てた治療・指導の方法から、より包括的な視点へと変革を促します。

この変革により、専門家による一方的な対処から、支援を受ける側と提供する側が協力し合い、共同で研究しながら適切な対応策を見出す共創的なパラダイムへの移行が見られます。これは、個々の当事者と闘うのではなく、共に心の闇から生じる恐怖や障害に立ち向かうという姿勢です。

単なる因果論的な問題行動の捉え方から脱却し、トラウマ反応の背後にある複雑な要因を総合的に理解することで、当事者と共に“こころ”の闇に対処する道を探求し、安全で保護された環境で適切な自己の自己組織化を図ることが可能になります。このアプローチは、トラウマを抱えるすべての人々に対するより深い理解と共感を促進し、より効果的な支援へと導くと思われます。