トラウマの扱い方(30):身体が記録する心的外傷

トラウマ記憶は、私たちの身体に深く刻まれた言語化されていない体験として存在します。ベッセル・ヴァン・デア・コークの神経科学的研究は、この事実を明らかにしました。トラウマとは、心的外傷と訳され、しばしば言語化による表現が治癒への道と考えられがちです。しかし、トラウマに苦しむ人々にとって、その記憶は言葉にすることすら耐え難いほどのものです。

生存の危機に直面した際、身体はその瞬間を永遠に記憶に刻み込みます。そして、トラウマは過去の危機が去った後も、些細なトリガーによって、まるでその時が再び訪れたかのような反応を引き起こすことがあります。

小児期逆境体験(ACE)は、神経発達に影響を及ぼし、精神疾患、薬物乱用、対人暴力、自殺未遂のリスク、さらには世代間伝達に至るまで、多岐にわたる深刻な影響を与えています。これらの発見により、医療、司法、福祉、教育などの分野では、トラウマを新たな視点から捉え直し、より効果的な対応策を模索する必要性が高まっています。

<参考>
身体はトラウマを記録する:脳・心・体のつながりと回復のための手法.,ベッセル・ヴァン・デア・コーク,2016.紀伊國屋書店.