直接体験(32):異文化の交差点

自己と世界の出あいによる不一致と一致は、西洋思想と東洋思想の統合の可能性を持った場といえます。西洋は、自己が観察主体となり、世界を観察対象として対象論理に基づく哲学や思想を発展させてきました。それに対して、西洋思想の影響を強く受ける前の東洋では、観察主体が無我となって観察対象と一体化するための行や道を探求してきました。禅はその典型です。こうした行や道を本格的な学問の対象とし始めたのは、西洋の学問の影響を受け始めた明治以降と考えられます。

現代において、西洋文化や東洋文化などあらゆる文化が錯綜する中で、自己と世界の出あいによる不一致と一致が展開する直接体験の場は、異文化が交差するカオスの縁のような場であり、すべての文化が融合し、統合が促進される可能性を持っています。しかし、その逆に無秩序化の危険性も孕んだ場ともいえます。

世界中のあらゆる文化や価値観が錯綜する現代にあっては、観察主体と観察対象の関係をめぐって直接体験をいかに扱うかが、各自己や世界にとって重要な課題になっています。