一般と特殊の関係(1):一般と特殊のホロニカル関係

心理学を近代科学のように誰にとっても検証可能性のある普遍法則を求めて客観的に研究する学問と定義するのか、それとも代替不可能なかけがえのない個人の生きる主観的な意味の探究をする学問と定義するのかで心理学の理論も研究の方法論もまったく異なるものになっていきます。前者は統計学的なデーターに基づくエビデンスを求め、後者は物語的な意味の研究となります。前者の方法論でもって後者を説明することはできず、その逆も同じです。

ホロニカル心理学では、一般法則を探究するような科学的な側面と、特殊な出来事のもつ物語的な意味の探究の両者を共に重視し、一般と特殊の関係を、一般は特殊を包摂し、特殊は一般を包摂し、一般と特殊は縁起的包摂関係(ホロニカル関係)にあると考えます。

ここにひとりのAさんがいるとします。Aさんという存在には、他の人と共通する一般的な法則を幾らでも見つけることができます。しかし同じAさんの存在には、他の人とはまったく代替不可能な固有の意味をもった存在でもあるのです。

問題は、Aさんを観察対象とする時に、Aさんの一体どんな面に焦点を合わせて観察しようようとしているかの差異として、一般と特殊との関係が決まってくるといえるのです。特殊な何かが発見・顕在化した時には、一般的なるものは潜在化してしまいます。逆に一般的なるものが発見・顕在化した時には、特殊なるものは潜在化してしまうのです。Aさんの特殊なるものは、Aさんの一般的なるものがなければ存在しません。またAさんの一般的なるものは、Aさんの特殊なるものがなければ存在できないのです。

心理学には、観察主体と観察対象の関係性の関係を含みながら複雑なものを複雑なまま研究するところから一般と特殊の「理」を発見していくことを可能とするような新しい研究方法の確立が必要と考えられます。