
男性性と女性性の二面性を合わせもつものを両性具有と呼びますが、古来、こうしたイメージを示す象徴は両性具有の神を含め沢山あります。
ルーマニア生れで宗教の研究で有名なエリアーデが指摘するように、両性具有の神は、古代人の抱いた原初の世界に対する全体性とか完全性のイメージを象徴すると思われます。原初の混沌においては、天と地、陰と陽などあらゆるものは統一された完全なるものとして象徴的に理解され、一なる原初の混沌なるものが分裂して、対立する二なるものが創造されたという世界創世の神話にもつながるわけです。こうした神話は世界中に沢山あります。
両性具有なる全体的で完全なるもの自身のうちに、対立を生み出す“ゆらぎ”が矛盾として包含されていたことが、万物の生成と創造の契機として古代社会から考えられてきたわけです。
両性具有の神の物語では、もともと完全なる一だったものが、対立する関係になったため、もともとの傍らの異性を求めて,完全になろうとする希求が性愛と考えられてきたわけです。 もともと一なるものが二となりその二なるものの結合(聖婚)によって、豊穣な世界が産み出されたというわけです。天と地、光と闇、善と悪、陰と陽など、相反するものはもともと一つであったというイメージには、その後の世界宗教の始原のイメージがあると考えられます。
一が二となり、そして多になるからこそ、森羅万象が一即多・多即一なる関係にある世界が生成され創造されるわけです。逆にいえば、本源的一を否定するような有・無の対立なきところには、何かがあるとはいえないとなるわけです。それ自身がそれ自身を否定するようなものから天地創成の神話のごとく二の対立的世界が生まれ、それがさらに多に分裂し、万物からなる世界が生成されたと語られ続けてきたのです。