私たちは時に、自己の内側に、自分自身を超えた何かが働いていることを実感・自覚する瞬間に出あいます。それは、自己の限界を超える力や知恵、あるいは深い直観が、自分の意志や思考を超えて現れてくるような体験です。
このような経験は、自己の自己超越的側面への覚醒と呼べるものであり、自己が単なる個人的存在にとどまらず、より大きな全体性や一般的な次元と接続していることへの気づきです。信仰とは、まさにこの気づきから始まるのです。
外部から与えられる教義や制度ではなく、自己の深層に触れたときに立ち立ち顕れる、超越的なものへの畏敬と信頼です。それは、宗教的であるか否かを問わず、人間が自己を超えた意味や価値を求める営みの根源にあります。
ホロニカル心理学の立場から見ると、この「自己を越えたものの働き」は、個人がより大きなホロン(全体性)の一部として機能していることを意味します。自己は孤立した存在ではなく、常に全体との係性の中で位置づけられ、上位ホロンとの接続を通じて自己超越が可能になります。この気づきは、単なる内的体験にとどまらず、臨床・教育・社会実践においても重要な転換点となり得ます。つまり、自己の中にある超越的契機への目覚めは、自己意識の発達に伴う深化や適切な自己の自己組織化を促進するのみならず、共同体や文化の変容にも寄与する可能性を秘めているといえます。