ホロニカル・アプローチは、治療でも、心理療法でも、カウンセリングでもなく、心理相談でもなくなりつつあります。これまでの枠では、収まらなくなってきているのです。
自己にとって、自己と世界の不一致という自己違和感体験の瞬間は「苦」です。その逆に、自己と世界の一致というホロニカル体験は「楽」です。自己は、「苦」と「楽」の相矛盾の対立を避けられません。自己にとっては、そもそも生死の矛盾と対立が避けられません。この世に誕生し生を得ても、自己と世界を創造してきた「絶対無」にいずれなることを避けることはできないのです。自己とは、実に儚い存在です。だからこそ、自己は、絶対に相矛盾するものが同一にあることの意味を問い続けながら、何かを世界に向かって創造しないでいられなくなります。
ホロニカル・アプローチは、こうした事実を実感・自覚することの出来る観察主体の促進を通じて、少しでも自己と世界が一致する方向に生きる道の発見・創造を共に模索します。こうしたパラダイムによる行為は、もはや、治療でも、心理療法でも、カウンセリングでもなければ、ワークでも、観想法でもなく、既存の枠組みでは説明がつかなくなっているのです。
これまでの臨床心理学は、洞察、内省、分析、気づきなど、当事者自身に一定の観察能力があることが暗黙の前提にされていました。その結果、支援のトーンには、当事者自身の自助努力を前提とするニュアンスがありました。専門的知識をもった専門家は、当事者の自己責任における自助努力を支援するというトーンだったわけです。しかし、そうした対話を前提としたパラダイムでの限界も明らかでした。洞察、内省、分析、気づきが難しい人がいるのです。従前の臨床心理学的支援法に対してホロニカル・アプローチは、適切な観察主体自体の確立や充実化のサポートをとても重視します。適切な観察主体が脆弱な場合には、共同研究的協働関係の成立に尽力し、適切な観察主体の内在化を促進しますが、困難な作業となる場合もあります。しかし、一旦、当事者と支援者の間の共同研究的協働関係が成立さえすれば、当事者が日常生活において、適切な自己の自己組織化を促進することが出来るような場づくりもサポート可能となります。