社会的変化とアセスメント

急激な社会的変化と価値の多様化は、精神疾患の診断基準や、性格、人格、知的能力やさまざまな発達検査などの心理学的アセスメントにも影響を与えます。価値の多様化や多元化による社会のカオス化は、社会に生きる人の一般化や標準化が難しくなったことを意味します。その結果、心理統計学的に定められた標準からの逸脱を識別することを前提として構成されたアセスメントの場合、これまでの尺度自体の妥当性や信頼性の確保が困難になりつつあります。ひとつひとつの心理学的アセスメントのデーターは、個性の特徴を示すことはあっても、一般的な標準との比較そのもののもつ意味が失われつつあります。

社会的文脈が異なることによって自己自身が多様な顕れ方をするということは、自己のアセスメントを、これまでの単発的で、静止的で、部分的で、の考慮が欠け気味だったアセスメントから、もっと場を含んで、流動的、動的、かつ総合的に捉え直していくことが重要になってきたということです。

そもそも自己自身が社会的文脈が異なると、異なる自己の面を示すことが顕在化してきた時代にあっては、時代や社会的な文脈の変化を受けにくい確かな指標でも見つけない限り、数回のアセスメントでもって、ある人の性格、人格、知的能力を測定することの限界が明かになりつつあるのです。