統合的アプローチの有効性

複雑多様化する心理社会的問題に対しては、エビデンスがあるとされている一理論一技法でもってしても、当然のことですが、すべての問題に対応することはできません。限定された問題の変容が可能になるだけです。

このことは誰もが知っているのですが、苦悩が深い時ほど、どうしても藁をも掴む思いから幻想的期待を抱き、そして幻滅します。

しかし大切なことがあります。小さな意味のある変容の影響を徹底的に増幅・拡充していくと、やがて限定されていた最初の問題以外にも変容効果が波及することはあり得るということです。

すべては瞬間の出来事です。大切なことは 一理論一技法によって持たされた一瞬・一瞬の変容を、一理論一技法の効果だと酔いしれることなく、それ以外の次元や層の抱える問題の変容の契機として積極的に活用していく姿勢です。

そのためには、一理論や一技法を、もっと包括的で、より統合的、より総合的な観点の一部であることの自覚が大切といえます。一技法・一理論の万能主義や権威主義が統合的変容の弊害となるのです。このとき、部分と全体の関係は、ホロニカル関係(縁起的包摂関係)にあるというパラダイムがあると、一瞬一瞬の小さな意味のある部分的変容が、やがてもっと大きな意味のある変容につながっていくという意識をもつことが可能となります。支援者と被支援者が、そうした基本的パラダイムを共有していればいるほど、被支援者の自発自展的変容が促進されやすくなります。