新しい生き方の創発

自己意識の発達における外我の第4段階の他律的外的現実主体から第5段階の自律的外的現実主体への移行は、外我と内我による内的対話の繰り返しだけでは起きません。自己内に閉じた内的対話だけでは、第4段階の既知のホロニカル主体(理)を内在化した他律的外的現実主体が内的現実主体に対して、いつまでも多層多次元にわたって制限的に振る舞うだけです。

第4段階から第5段階への移行は、未知のホロニカル主体(理)を内在化した他者とか社会との開かれた出あいによる直接体験を直覚する内的現実主体(内我)と他律的外的現実主体(外我)との対話が必要になります。新しいホロニカル主体(理)との出あいの度に、他律的外的現実主体が内在化していた既知のホロニカル主体(理)の見直しや書き直しが必要になります。外我と内我の対話による新しいホロニカル主体(理)の創発が、他律的外的現実主体から自律的外的主体への移行を促進するのです。また内的現実主体との対話から創発されるホロニカル主体を内在化しながら生きる自律的外的現実主体は、それまでの受動的な生き方から、より能動的な生き方への移行を可能とします。

ナラティブ・セラピーでいう「ドミナント・ストーリー」から、「オルタナティブ・ストーリー」への変容は、ホロニカル心理学の立場からは上記のように理解されます。また、ホロニカル・アプローチでは、究極のミクロの点から究極のマクロの球に至る悪循環パターンを自由無礙に俯瞰することによって、固定的で流動性を失ってもはや不適切となった既知のホロニカル主体(理)に代わって、複雑なものを複雑なまま実感・自覚していく中で、新たなホロニカル主体(理)を創発し続けていきます。

 

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