治療と相談をめぐる混乱

同じ心的症状や心的問題に対して、同時に沢山の治療を受けることは、治療方針の差異による混乱を招きやすく、あまり望ましくないけれど、相談ならば、むしろ沢山の人にいろいろな意見をもらった方がいいと一般的には考えられています。しかしながら、どうやら問題はそう簡単にはいかないようです。というのは、同じ“こころ”の問題を扱いながら、助言・指導、アドバイス、心理相談、心理面接、心理療法、心理治療、精神療法という類似用語を、治療と相談の基本的差異を不明確にしたまま支援者自身が使っているためです。

この問題に関して、ホロニカル・アプローチでは次のように考えています。

ホロニカル・アプローチは、「被支援者が抱えている生きづらさについて、支援者が共同研究的に協働しながら、被支援者自身が、より生きやすい人生の道を発見・創造するのを心理社会的に支援する行為」というもので、治療者が行う治療的行為とは明確に区分しています。

ホロニカル・アプローチでは、被支援者が、他の支援者や他の機関を平行利用することは、被支援者自身が混乱していない限り問題ではないと考えます。しかしながら、複数の支援者や複数の機関の利用が、被支援者自身に混乱をもたらしている場合には、混乱の整理を積極的に扱います。すると、こうした整理作業そのものが、被支援者の主体的変容に大きく影響するという変容が起きてきます。

整理にあたっては、治療行為と非治療行為の相似性と差異の明確化を図るとともに、それぞれの支援行為が被支援者の“こころ”の多層多次元の顕れにどのように影響しているのかについて、被支援者と共に明らかにし、被支援者が自ら抱える生きづらさの問題解決に対して、有効な支援の自己選択及び自己決定の主体になれるように支援していきます。

実は、そうした行為自体が、問題解決の主体を、専門家の手から被支援者自身に取り戻すことになり、結果的には、被支援者自身が、より生きやすい新しい生き方を発見・創造するのを促進していきます。

どうやら現代社会は、“こころ”の問題の解決の主体を、“こころ”の専門家から、当事者自身に戻していくことが必要になってきているようです。