心理社会的支援は、生きづらさをもたらしている具体的な生活上の問題に関して、なんらかの解決を促進するようなものであることが大切です。それがたとえ些細なテーマであったとしても、小さな意味のある変化がやがて大きなよりよき変容の引き金になることが多いからです。
とはいえ、生きづらさを生きやすくするためには、まずは安全で安心できる最低限度の生活が公的及び共助的によって保障されなければなりません。安全で安心できる生活環境の保障があって、はじめて適切な自尊心や自己効能感などが育まれます。しかもかつての生活と新たな生活との比較において、当事者自身が生活の質の差異を明らかに実感・自覚できるものでなくてはなりません。
医療・福祉・教育などいかなる心理社会的支援も、最低生活を保障する上においては、当事者の選択と自己決定を尊重するものであるか、それを根拠をもって代弁するものでなくてはなりません。決して、当事者が、「治療をうけること」や「働くこと」を条件にしてサービスを提供するようなパターナリズムに基づくものであってはなりません。まずは生きづらさを感じている人が望む場所で、最低の生存が保証されることが前提です。「ハウジングファースト」(稲葉剛・小川芳範・森川すいめい編、2018年、山吹書店)が大切といえます。物理的な最低生活を保障した上で、多層多次元にわたる課題に関して、当事者の意思と自己決定の原理に基づく社会包的支援がはじめて可能になると考えられるのです。
まずは誰でも最低生活が社会によって保障されているという安全感・安心感があって、自己および世界に対する信頼感が形成され、生きる意欲が高まり、自助努力も可能になると考えられるのです。
生きづらさを抱えている人にとって、誰かとまた会いたくなるような小さなコミュニティができる時、人と人の絆による多層多次元なテーマに関する支援がはじめて可能になると考えられるのです。