観察主体と観察対象をめぐる、多層多次元にわたる悪循環するフラクタル構造の一つの例を示します。
ある被支援者の男性の観察主体(外我)は、身体を鍛錬し、苦難に遭遇しても自力で乗り越えることを理想とする性格になることに価値を置くホロニカル主体(理)を内在化しています。しかしながら、被支援者にとって自己の性格(内我)は、あまりに理想からかけ離れています。そのため被支援者の観察主体(強靭な性格を理想とするホロニカル主体:理を内在化)は、自己の性格(内我)に対して、とても批判的で、かつ攻撃的な態度をとっていました。そのため内我は、いつも自己懲罰的になり、自信を持てず、無力感に襲われて抑うつ状態にありました。
しかしこの時、観察主体(外我)は、性格という位相ばかりではなく、内我の身体的な位相に対しも批判的で攻撃的態度を自己相似的に持っていたため、身体に対しても強いコンプレックを抱いていました。
またこうした観察主体と観察対象をめぐる内的対象関係の特徴は、外的な対人関係においても自己相似的な悪循環パターンを反復していました。被支援者は、ちょっとでも相手に威圧感を感じた途端、身体は麻痺したように過剰に緊張し、言いたいことが口籠もって何もいえなくなるというパターンを繰り返していたのでした。恐らく自律神経等、神経生理学や生物学的位相における反応とも密接な関係にあると思われます。
頑固な症状や心的問題のときほど、実は、一瞬の呼吸、動悸、身構え、視線、姿勢など、どの位相をとってもフラクタル構造を発見でき、微細な身体的反応を手がかりにして、観察主体と観察対象の関係の変容を促進することが可能と考えられるのです。
ホロニカル・アプローチでは、こうした観察主体と観察対象をめぐるフラクタル構造に対して、もっとも短期で変容を見込める最近接領域の位相の具体的テーマの変容を促進することによって、観察主体と観察対象の関係の変容に積極的に焦点化するのが特徴です。