人類は、いつ頃から言語を獲得しはじめたのでしょうか。ただ想像されるのは、最初の人類が初期に獲得した言語は、今日のような言葉で会話を可能にするものではなく、もっと夢見るようなイメージ的な感覚を何とかして仲間に伝えようとした発声ではなかったのではないかということです。
イスラム神秘学者の井筒俊彦は、唯識論の「アラヤ識」と言語の関係を論じる中で、イマージュの活発に働く「言語アラヤ識」という領域を明らかにし、ユング心理学の集合的無意識層の元型論との関係を詳細に論じていますが、これらの領域の言語とは、ホロニカル心理学の内我の「夢言語」に相当します。
ホロニカル心理学では、日常生活で私たちが使用している言語は、外我による言語と考えています。森羅万象の出来事を対象化し、それらを主語と述語という構造をもった文法を使って語りあっているのは、ほとんど外我の言語が中心です。しかし、外我の言語の背景には、もっとイマージュ的な内我の言語領域が無意識層として無限にあるとホロニカル心理学では考えています。こうした内我の言語を、「夢言語」と概念化しています。誰もが眠りに陥れば、明晰で意識的な世界から、たちまちのうちに夢言語によるイマージュの世界に参入することになります。意識的活動の背景には、常に意識されることがないイマージュに基づく夢言語的な世界があるわけです。
実は、頑固な心的症状や心的問題を抱える人が適切な自己の自己組織化を促進をしようとするとき、意識的な変化だけではなくイマージュ領域での変容が伴わないと、「わかったけど、変わらない」という腑に落ちない状態が続きます。腑に落ちるとは、夢言語的にも了解できたという意味をもつわけです。
ホロニカル・アプローチでは、そうしたイマージュ領域の変容を促進する方法としてユング心理学のアクティブ・イマジネーションを積極的に取り入れています。映画監督法は、その典型です。
参考文献
井筒俊彦(1983)「意識と本質」.井筒俊彦全集 第六巻,慶應義塾大学出版会.