共創的支援の事例(1):「アンガーマネジメント」の受講勧奨に抵抗を示したある母親(1)

AIで作成

夫の暴力から逃れ、母親Xと小学校5年生のY(男)の2人で暮らす家庭に訪問支援を行っていた市の女性相談員A(女性)は、母親Xから、最近のYの激しい反抗について、「夫とそっくりで、もう疲れ果ててしまった」という悩みを聞きました。そこで女性相談員Aは、Aが信頼関係を築いている児童相談所での職歴が5年目の児童福祉司B(男性)に相談することを母親Xに提案しました。

提案を受けた母親Xは、相談に行くことを渋る子どもYを説得し、児童相談所に向かいました。児童相談所に到着すると、事前に女性相談員Aから連絡を受けていた児童福祉司Bは、親と子どもが別々に話しやすいと判断し、母親Xの相談に応じ、子どもYには女性の若い児童心理司Cを紹介し、親子並行面接を実施しました。

親子並行面接では、子どもYは、些細なことで母親Xがすぐに怒ることについての不満を児童心理司Cに訴えました。一方、母親Xは、親の言うことを聞かず、自己中心的な行動を取る子どもYへの対応に困惑し、自分自身が体罰をする両親によって育てられたこともあり、いけないと思いつつ、つい体罰を加えてしまう苦しみを児童福祉司Bに打ち明けました。そして、面接を終えた児童福祉司Bと児童心理司Cは情報交換に基づく方針として、母親Xに対して、「アンガーマネジメント」プログラム(週1×5回。児童相談所が委託している事業者が実施)を提案し面接を終了しました。

しかし、母親は、児童相談所に相談に行った直後から、子どもは母親の言動が問題だと感じ、反抗が一層激しくなりました。「アンガーマネジメントを受けるべきは子どもだと思う。それなのに、まるで私(母親)が悪いかのように言われてしまった」「もう二度と児童相談所には行きたくない」と、女性相談員Aに打ち明けました。

女性相談員Aは、母親Xの同意を得て、その後の経過と母親の思いを児童福祉司Bに伝えます。先の面接後、むしろ母子関係が悪化したことや、母親Xの思いとのズレを理解した児童福祉司Bはショックを隠せませんが、ではどうしたらよいか混乱し、児童心理司Cと共に、スーパービジョンを受けることを決意します。(続く)