
乳幼児期から安定した愛着関係を形成し、内在化してきた子どもは、対人関係における感情調節を柔軟かつ適切に行うことができます。一方、不安定な愛着関係の環境で育った子どもは、自身の感情を理解し、適切に調整する能力を欠き、結果として不適切な自己防衛策を身につけてしまいます。これにより、子どもは不安を内包し、精神的な安定を維持することが困難となり、さまざまな症状や問題行動を示すことになります。
神経生理学的な過覚醒や低覚醒などの反応も、適切な不安時の愛着対象による適切なホールディングによって、適度な覚醒レベルにまで鎮静化されます。これにより、愛着対象の作用を内在化し、適切な感情調整能力を獲得していきます。
心理療法の領域では、認知行動療法のような認知に焦点を当てるアプローチと並んで、感情に焦点を当てるアプローチが最近では活発化しています。感情焦点化療法はその一例です。
また、最近の傾向として、陰性感情に焦点を当てて治療や修復を試みるのではなく、陽性感情となる体験を増幅・拡大することで、陰性感情の鎮静化を促進するアプローチが注目されています。ホロニカル・アプローチのABCモデルはその代表的な例です。
支援者と被支援者の一対一の協働関係だけでなく、複数の支援者による共創的なミーティングも、被支援者の適切な感情調節機能の内在化を促進します。例えば、子ども虐待の事例では、一対一の協働関係の構築が困難な場合でも、チーム対応により具体的な問題を外部化し、安全で安心できる問題解決の道を共創的に探求する開かれた対話の場を構築することで、多様な感情調整能力を身につけることが可能となります。
適切な保護的な場とは、安全と安心が保証され、感情調整が協働的な作業となり、共有された矛盾を包含するだけの柔軟性(ユーモアを含む)を持つ場です。
適切な感情調整能力の獲得にとって最も重要な条件は、人が適切な感情調整能力を内在化し促進(再獲得)することができるような、適度な保護的な場が存在するかどうかです。